19日に都内ホテルで行われたボクシングの世界戦発表会見で、WBC世界フライ級王者比嘉大吾(22=白井・具志堅スポーツ)を鍛え上げる名物トレーナー、野木丈司氏(57)に話を聞いた。
- 防衛戦が決まりポーズをとるWBC世界フライ級王者の比嘉大吾(2018年2月19日撮影)
「羽生さん、小平さん、ああいうすばらしさに近づきたいですよね」。
4月15日に横浜アリーナで愛弟子が挑む同級2位クリストファー・ロサレス(23=ニカラグア)との防衛戦に向けた調整について質問を向けると、いの一番にそんな感嘆が返ってきた。
前日18日に平昌五輪スピードスケート女子500メートルで小平奈緒が金メダルを獲得したばかり。17日にはフィギュアスケート男子で羽生結弦が66年ぶりの2連覇を成し遂げた。
同氏は元プロボクサーながら千葉・佐倉高時代は陸上部に在籍。シドニー金メダリストの女子マラソン高橋尚子らを育てた小出義雄監督の薫陶を受けた。五輪を観戦しているのは五輪競技(ボクシングはアマチュアが参加)出身の出自もあるだろうが、すごく視野が広く、比嘉の強さの源を感じた。
- 野木丈司トレーナー(左)と二人三脚でフィジカルトレに臨む比嘉大吾
というのは、その「すばらしさ」についてこう続けたから。「全体的な強さがある。だからああいう状態でも勝てるんですよね」。それは右足首の負傷で試合は4カ月ぶりのぶっつけだった羽生を指した言葉で、「それがあるから自信もあるし、動きも美しくなると思うんです」と25連勝とした小平のスケーティング技術にも対象を向けた。そして、「大吾も最近の発言をみるとね…」。
比嘉は2月4日に37年ぶりとなる故郷沖縄での世界戦で、1回KOで日本記録に並ぶ15連続KO勝ちで防衛に成功した。その時を振り返り、「『調子悪くても自分の方が少し上』と言っていたでしょう。いいですねえ、あれは」とニッコリした。「勝負の舞台では100%の力を出せないものですよね。ただ絶対的な力量差があれば、それでも相手を封じ込めることはできる。本人も(普段から)猛練習している意味を理解しているのかな」。猛烈な練習の意図を自然と体得していそうな教え子の発言だった。
- 15連続KO勝ちで防衛に成功した比嘉大吾(左)は具志堅用高会長と笑顔を見せる(2018年2月4日撮影)
次戦は日本新記録の16連続KO記録がかかる。試合間隔2カ月にも、比嘉は「何の問題もない。1回から12回のどこかで必ず倒す」と意に介さない。「すばらしい」強さでの快勝を期待したい。【阿部健吾】