大相撲7月場所は何とか無事に? 15日間を終えた。「名古屋場所」が東京・両国国技館開催となり、観客も上限2500人で入った。さまざまな点で異例の場所だったが、取材する立場にとって最大の挑戦が「リモート取材」だった。

通常であれば支度部屋に入り、幕内力士なら風呂上がりを待ち、髪を結い直す間が取材時間になる。大相撲の歴史同様、長々と受け継がれてきた取材手法だ。しかし、新型コロナウイルス感染予防対策で実施された今場所、取材対象はパソコンの画面越し。取材する側は受け身でしかなく、負けた力士などどれだけ応じてくれるのか、初めての試みは不安しかなかった。

結果論からいえば、日によってばらつきこそあれ、負けた力士もよく応じてくれたと思う。ただ、問題も数多く露呈した。力士は質問する声を聞き取れず、取材する側も力士の声が聞こえにくいケースが多数あった。とはいえ、初めての試み。今場所の15日間を踏み台に、技術面を含めて改善されていくのだろう。

とはいえ、この取材手法が定着されたら厳しい。顔と顔をつき合わせて、話を投げて聞くのが対話の基本。技術がなしえた「リモート取材」だが、やはり会話はたどたどしかった。例えば悔しい負けで話したくなくても、表情や態度で思いを感じ取れる。今でこそ少なくなったが、以前は記者に背中を向けて「しゃべらん」という無言のオーラを漂わせながら髪を結い直す力士も少なくなかった。悔しさや思いは、その背中から感じ取れた。リモートでは伝わらない。

新型コロナウイルスは多くの日常を壊している。普段の生活はもちろん、スポーツ界においても顕著。観戦するやり方、取材するやり方。これまでの凝り固まった観念を崩さなければいけないが、失いたくないものもある。

秋場所は9月13日初日とすぐに訪れる。7月場所は照ノ富士が、史上最大の復活劇を遂げた。そんな感動をしっかりと伝えたい。あと1カ月少し。いやなニュースが続くが、「コロナ退散」を願うばかりだ。【実藤健一】