奈良・王寺工の3年コンビが、史上初の高校8冠に王手をかけた。ライト級の今永虎雅(たいが)とウエルター級の荒本一成で、ともに5-0判定勝ちを収め、9日の決勝に駒を進めた。

 アマチュアボクシングの高校タイトルはインターハイ、国体、選抜とあり、3月開催の選抜は3年が出場できないため、獲得可能なタイトルは最多で8個。今永はバンタム級、荒本はライトウエルター級からスタートしており、今回の決勝に勝てば、3年間で全タイトルを総なめすることになる。

 世界2階級王者で現WBOスーパーフライ級王者の井上尚弥は相模原青陵時代に高校タイトル5冠ながらシニアの全日本選手権、プレジデント杯に優勝し“高校でアマ7冠”を成し遂げた。いわば別格の存在だが、世界3階級王者で現WBAフライ級王者の井岡一翔(興国出身)、元世界2階級王者粟生隆寛(習志野出身)らの高校6冠を超える快挙だ。

 今永はこの日、宮崎・日章学園の堤龍之介と対戦。サウスポー同士、8月インターハイ決勝の再戦で、距離をつぶしてくる相手に苦しみながら勝利を手にした。「あまり内容は良くなかったですが、中に入らせないことを心掛けた」という。高校8冠の重圧に「そんなに感じないと思っていたけど、大会が始まると今までにない感覚で…。初戦なんか、かなり硬かったです」と苦笑いした。

 荒本はこの日、東京・駿台学園2年の須永大護と対戦。インターハイ準々決勝でダウンを奪われた強敵と終始インファイトを繰り広げ、ポイント差で退けた。インターハイで階級をウエルター級に上げた。「正直まだ慣れてない部分はあります。でも、今日みたいに体格、リーチで上回る相手に距離を取ったボクシングだけでは無理。だから、接近戦で頭をズラしながら戦うことを心掛けました」と話した。

 2人は「東京五輪の金メダル」を目標に掲げており、今永が東洋大、荒本が日大に進学予定。まずは前人未到の快挙を達成し、夢に弾みをつけるつもりだ。