ボクシングのWBA世界ミドル級王者村田諒太(32=帝拳)が、競技人生の大目標として東京ドームでのビッグファイトを掲げた。15日、沖縄県内でIBF世界スーパーフェザー級王者尾川堅一(29)、元2階級王者粟生隆寛(33=ともに帝拳)と行っている合宿を公開。使命感を帯びた口調で、「日本を盛り上げていきたい。最終的には東京ドームで試合をしたい。ボクシング界に恩恵を返すことになると思うので」と決意を述べた。

 昨年、アッサン・エンダム(フランス)と2度の世界戦で雌雄を決した。5月の王座決定戦ではダウンを奪いながら不可解判定で敗れた。現役続行を決めて臨んだ10月の再戦では、7回終了時に棄権に追い込んでTKO勝ちし、日本人では2人目のミドル級王者、五輪金メダリストとしては初の快挙を成し遂げた。

 それまで掲げていた目標は、本場の米ラスベガスでのビッグマッチだった。ただ、ベルトを手にして、多くの人から祝いや激励の言葉などをもらうにつれて、その視線は変わってきた。「ラスベガスはもちろん試合をしたいですが、僕は日本のボクシング界が盛り上がってほしいと思うようになった。それには東京ドームというのも現実にしてもいいんじゃないか、と」。

 歴史を振り返ると、ボクシングでの東京ドーム開催は過去2回しかない。いずれも世界ヘビー級統一王者だったマイク・タイソン(米国)の世界戦で、88年と90年に行われた。どちらも5万人超え。収容人数を考えると、現在の日本人による世界戦では満席をなる可能性が低く、3度目はなかなか実現しなかった。

 ただ、村田なら、と思わせる現実はある。昨年末の紅白歌合戦の審査員を務めたように、知名度は抜群。日本スポーツ界でも無類の存在だ。そして何より、当人に芽生えた使命感。「実現できたら最高ですよね」。12日に32歳を迎えた希代のボクサーの今後がますます楽しみだ。