ボクシング前4団体統一バンタム級王者でWBC、WBO世界スーパーバンタム級1位の井上尚弥(30=大橋)が25日、東京・有明アリーナでWBC、WBO同級王者スティーブン・フルトン(29=米国)に挑戦する。24日に横浜市で前日計量に臨み、100グラム少ない55・2キロ、フルトンはリミット55・3キロでパス。フェースオフ(にらみ合い)では「上から目線」の王者に対し、怒りのメンチで32秒間、にらみ合った。WBO世界フェザー級王者ロベイシ・ラミレス(29=キューバ出身)、挑戦者の清水聡(37=大橋)はともに57・0キロで計量クリアした。
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至近距離で火花が散った。計量後、恒例のフェースオフ。約5・5センチも身長が高いフルトンと目が合うと、井上は厳しい眼光に変わった。開始17秒の時点で日本ボクシングコミッション関係者の制止が入ったものの、目をそらすことなく続行。実に32秒間という異例のメンチを続け「いやあ、燃えてきましたね」と声をはずませた。
身長差以上の“上から目線”を感じていた。「腹が立った。(フルトンの)顔が。視線の送り方ってあるじゃないですか。ちょっと上からきている感じだったので、上等だよ、と」。目は笑っていたが、モンスターの胸には力強い「闘志」が芽生えていた。
試合前に怒った時の井上は強い。18年5月、WBA世界バンタム級王者ジェイミー・マクドネル(英国)が前日計量に1時間遅刻すると、怒りをぶつける連打で1回TKO撃破した。19年5月、IBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)戦前には公開練習で父真吾トレーナーが相手陣営に突き飛ばされたことで、井上は怒りのボルテージを上げ、2回TKO勝利。試合前に一騒動あった相手は必ず序盤KOで仕留めてきた。
「そんなに自分は表情に出すタイプじゃないから。メンタル的にもよく仕上がっているなと。いい試合になりそう」
国内2人目の世界4階級制覇を狙う。統一王者から世界ベルト2本を同時に奪えば日本初。勝てば区切りの世界戦20連勝に到達する1戦だ。「120%、仕上げた。1つ階級を上げたからといってたるんだ体ではなく。筋肉をつくり上げてスーパーバンタム級の体をつくってきた」と自負。怒りのエネルギーは試合のパワーに変える。モンスターは「打ち合ってくれたら爆発的なものが出せるが、明日(25日)は技術戦になると。感情は抑え、頭を使って戦いたい」とクールに締めくくった。【藤中栄二】
▽井上が怒った世界戦
◆遅刻に怒り 18年5月、WBA世界バンタム級王者ジェイミー・マクドネル(英国)が前日計量で減量苦を理由に1時間遅刻。計量クリア後も反省の色がない王者に対して1回、強烈な左ボディーでダウンを奪取。その後も怒濤(どとう)の連打で同回1分52秒、TKO勝ち。
◆父への対応で怒り 19年5月には、IBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)戦時の公開練習で父真吾トレーナーがスマホで写真撮影した際、相手陣営に詰め寄られた。怒りを秘めて2回、左フックでダウンを奪うとラッシュで同回1分19秒、レフェリーストップのTKO勝利を挙げた。

