負けて土俵を下りる際、立行司が手にしていた懸賞の束が、目に入った。その瞬間、新小結の宝富士(28=伊勢ケ浜)の悔しさは、余計に募った。「束が2つくらいあった。もう少しで手にできたのに」。横綱白鵬(30=宮城野)を慌てさせたが、白星はつかめなかった。
立ち合いからの流れは狙い通りだった。左脇を思い切り固めて、白鵬の右差しを徹底して防いだ。突き放し、土俵際まで押し込んだ。だが「押そうと思ったら、手が滑って入っちゃった。吸い込まれた感じで右四つになってしまった」。
相手を半身にはさせたが、苦手な右四つ。なかなか前に出られない。さらに、白鵬の蹴り足が右ふくらはぎに当たり、余計に出足が鈍った。「早く攻めないとダメですね。どうせ負けるなら攻めれば良かった」。1分を超える相撲を演じたが、最後は力尽きた。
それでも、ちょっとした進歩もあった。「いつもより緊張しなかった。土俵ではいつも、相手の目を見ないけど、今日は3秒くらい見られた」。新三役となり、自信がついた証し。マツコ・デラックス似の男は、懸命に荒れた呼吸を整えながら「勝てそうだったっすね。明日っすね、懸賞金も」と、懸賞6本がつく2日目の大関豪栄道戦へと、気持ちを切り替えようとしていた。


