そう簡単に賜杯まで走らせない。先輩大関の意地だった。稀勢の里(29=田子ノ浦)は右のど輪で起こしてからすぐ、右上手を引いた。そこで照ノ富士(23)が振ってくるのは計算済み。上手があったから耐えられた。休まずに出る。寄って、最後は崩れ落ちる相手に覆いかぶさった。「攻めようと思った。やることをしっかりやろうと」。攻めて、力でねじ伏せた。

 夏、名古屋場所と連敗して迎えた8月の札幌巡業。トーナメント戦の決勝と決定戦で相対した。単なる花相撲。だが、賞金を前に全力で来た照ノ富士を2度倒した。本場所ではないが、稽古場とも違う胸合わせは、確かな糧となった。「花相撲も大事なんですよ」。

 自力優勝の目はない。だが、首位と1差。望みは残る。大関対決に勝って座布団が飛んだ屈辱を、力に変えられるか。「思い切ってやりたい。これからですよ」。奇跡の逆転優勝を、諦めていない。