アカデミー賞の前哨戦として知られる第77回ゴールデン・グローブ賞授賞式が現地時間5日にビバリーヒルズで行われ、動画配信サービス大手Netflix旋風が吹き荒れる中、最多3冠に輝いたのはクエンティン・タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でした。監督賞や作品賞の受賞が期待されたマーティン・スコセッシ監督の「アイリッシュマン」とフェルナンド・メイレレス監督の「2人のローマ教皇」は共に無冠に終わり、最多6部門にノミネートされていた「マリッジ・ストーリー」はローラ・ダーンの助演女優賞のみという結果に終わり、Netflix作品が大量受賞することが予想されていただけに大きな驚きとなりました。

1969年にロサンゼルスで起きたカルト集団による女優シャロン・テート殺害事件を題材にハリウッド黄金期の光と闇を描いた「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、コメディー/ミュージカル部門の作品賞、監督賞、そしてブラッド・ピットが助演男優賞を受賞。2月9日に行われる第92回アカデミー賞に向けて大きな弾みとなりました。また、ドラマ部門では「1917 命をかけた伝令」が作品賞、サム・メンデス監督の監督賞の2冠に輝くサプライズがあった他、アニメーション映画賞でもディズニーの「アナと雪の女王2」を抑えて「ミッシング・リンク」が受賞する番狂わせが。一方で、ドラマ部門主演男優賞には下馬評通り「ジョーカー」のホアキン・フェニックスが、主演女優賞には「ジュディ 虹の彼方に」のレニー・ゼルウィガーが受賞し、外国語映画賞もアカデミー賞作品賞の候補入りも期待される韓国の「パラサイト 半地下の家族」が順当に受賞しました。

今年のアカデミー賞は例年より約1カ月早い2月9日に行われるため、すでに2日から投票が開始されており、今回の受賞結果がどこまで影響するのかは不透明ですが、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」がこの勢いの中で作品賞、監督賞、ピットの助演男優賞、脚本賞などにノミネートされるのは確実。「1917 命をかけた伝令」も作品賞や監督賞で候補入りする可能性が高いですが、オスカーで挽回を狙う「アイリッシュマン」や「マリッジ・ストーリー」などNetflix作品がアカデミー賞でどこまで食い込めるのかが注目されます。また、「パラサイト 半地下の家族」の作品賞候補入りと共に「フェアウェル」でコメディー/ミュージカル部門の主演女優賞に輝いたオークワフィナの候補入りなど、アジア勢の躍進にも期待が持たれています。アニメーション映画部門では、「ミッシング・リンク」が一歩リードした形ですが、「天気の子」や「海獣の子供」など日本作品が候補入りするかどうかも注目したいところです。

本命不在といわれる今年のアカデミー賞は最後の最後までどの作品、俳優が受賞するのか分からない大混戦が予想されますが、アカデミー賞ノミネーションはいよいよ来週13日に発表されます。【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)