市川海老蔵(41)の叔母市川紅梅が初代市川壽紅、妹の市川ぼたんが4代目市川翠扇、長女の麗禾ちゃんが4代目市川ぼたんを襲名する市川流三代襲名公演「市川會」が3日、東京・渋谷のシアターコクーンで始まった。通常、舞踊会は1日だけのことが多いが、今回は3日から12日までの10日間12回公演と、かなり気合が入っている。

海老蔵は7月の歌舞伎座公演では途中でノドを痛めて、声が出なくなったため3日間も休演していた。7月28日に無事に千秋楽を迎え、本来ならゆっくり休んで体調を万全にするところだが、休む間もなく、舞踊会の稽古も始まり、本番でも市川流の家元として「口上」のほか、「寿式三番叟」、妹との「京鹿子娘道成寺」に出演する忙しさである。その間にも夏休みの子供たちのために、東京ディズニーランドに2日間連続で行くなど、パパとしても奮闘している。

歌舞伎座公演は海老蔵の休演のため、夜の部は3日も公演が中止となった。昼の部の「素襖落」は右団次が代演し、「外郎売」で勸玄くんが1人での奮闘ぶりが話題となったが、歌舞伎座は大変だった。チケットは完売していたため、払い戻しなどで数千万円の損失となった。その上に、食堂や売店の販売収入も見込めない事態となり、休演が3日だけで済んで、ホッとした空気が流れた。

海老蔵は休演する前に自身のブログで「働き方改革」を訴えていた。「歌舞伎の公演は皆さまが思われている以上に重労働です。毎日休みなく昼夜公演があるのが正常という昨今です」とつづり、自らが中心となる「七月大歌舞伎」では「数年前から半日休みを導入しています。私の意志です」と明かした。実は海老蔵が休演した時、ちょうど半日休みの日とぶつかり、夜の部の公演中止が4日ではなく3日だけとなる「幸運」もあった。

また、海老蔵は「根が役者なので大半の方は懸命に一生懸命日々努めます。風邪ひいていようと、声が出なくても具合悪くても、場合によっては歯医者さんや病院も行けない月が数カ月続くこともある」と現状をつづった上で、「これは良くない」と警鐘を鳴らしていた。通常の歌舞伎公演では1人が休演しても、すぐに他の人が代役するケースがほとんどだが、今回の夜の部は海老蔵が13役を早替わりする新作だったため、海老蔵以外はできないという状況があった。

17年に市川猿之助主演でスーパー歌舞伎2「ワンピース」が上演された時、猿之助が腕を骨折し、長期休演した。その時、数日の限定で猿之助の役を尾上右近が演じる若手公演を企画していたため、急きょ右近が代役を務め、公演中止は1回もなかった。そのため、今年10月に上演されるスーパー歌舞伎2「オグリ」では猿之助と中村隼人が交互主演となる。猿之助は「危機管理です。いつ腕がはさまれて骨折するか分からないから」と明かした。歌舞伎でも、俳優の体調管理のために公演日数の縮小や、新作の場合の「代役」準備などが必要な時代になってきた。【林尚之】