女性奴隷解放運動家ハリエット・タブマンの激動の人生を描いている。ミュージカル女優シンシア・エリボ(33)が主演し、主題歌も担当している。

奴隷制は日本人にはなじみが薄い。だが、ほんの150年ほど前の米国では、当然のように黒人が奴隷として売買され、白人にとってはその数も資産価値だった。知識としては知っていても、実話に基づいた映像作品を見ると、胸が痛くなる。

本作では、ハリエットを突き動かしたのが愛情であることが常に描かれる。夫への愛、家族への愛、そして人間愛だ。だが、逃亡奴隷を狩る奴隷ハンターが同じ黒人というシーンを見ると、「どうして…」と思わざるを得ない。黒人の中にも自由黒人と奴隷が分かれているのだ。それでも救われたのは、雇い主からの迫害を覚悟した上で彼女を助ける人もいること。その存在に安堵(あんど)させられた。

奴隷制はいわば人類の恥部だ。だが、その恥部をあえてさらけ出すことで風化させず、意識し続けることもできる。そこには痛みも伴うが…。その意味において、本作は“劇薬”といえるだろう。【川田和博】

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