「たたりじゃ~」。この言葉だけで、白髪を振り乱す老婆と異様な村を思い浮かべる人も多いだろう。何度も映像化された横溝正史の名作を、「呪怨」などJホラーの名手・清水崇監督が舞台を現代に移して映画化した。

令和の世に、たたりなど通用するのか。大学生・辰弥(奥智哉)は母の訃報(ふほう)を受け、探偵・金田一耕助(尾上松也)と母の故郷「八つ墓村」へ。名家・田治見家の遺産相続人として迎えられるが、周囲で奇怪な殺人が相次ぐ。

清水監督は田治見家当主・要蔵(滝藤賢一)が起こした惨劇や怪異を鮮烈に映し出す。家屋や墓、洞窟には不穏な気配が宿り、村そのものが1つの怪異のように迫る。

松也は飄々(ひょうひょう)とした金田一を軽やかに演じ、重苦しい物語に風を吹き込む。奥は辰弥の不安を繊細に表現。滝藤はむき出しの狂気で、物語の緊張感を一気に高める。

最も恐ろしいのは怪異ではない。「たたり」が人々の不安をのみ込み、疑いを特定の人物へ向けさせる。根拠のない情報が広がり、集団が個人を追い詰める構図はSNS社会と重なる。ネット社会にも、姿を変えた「八つ墓村」がある。【松浦隆司】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)