日々気付かなくても、長い年月を俯瞰(ふかん)すると、世の「当たり前」は大きく変化している。改めてそう実感させられる。

日本初のセクハラ裁判は34年前だ。映画はこれに着想を得て、○○ハラの認識がなかった時代の女性たちの闘いを描いている。

金にならない案件ばかりを引き受ける人権派弁護士の朝日は3児の母で、同じ弁護士の夫から当たり前のように家事全般を押しつけられている。今なら夫にブーイングが飛び、同情を寄せられる設定だが、綾瀬はるかが演じると、平然と理不尽を引き受け、明るく振る舞うバイタリティーに説得力がある。

依頼人の上原(ファーストサマーウイカ)はやる気も能力もあるライターだが、編集長から度重なる嫌がらせを受け、ついには職場を追われてしまう。現実主義者の後輩弁護士(松本穂香)の反対を押し切り、朝日は前例のない損害賠償訴訟を引き受ける。

今ならあり得ない男性側のイヤ~な連帯感、女性団体の内部抗争…険しい道のりに前田哲監督ならではの人情喜劇の味わいが加わる。リアルな時代描写に、職場でタバコを吹かした当時の当たり前を思い出す。【相原斎】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)