通天閣の地下の売り場で販売されている関西各地のお土産(撮影・松浦隆司)
通天閣の地下の売り場で販売されている関西各地のお土産(撮影・松浦隆司)

チョコレート、クッキー、まんじゅう-。大阪の観光名所、通天閣(大阪市浪速区)の地下の売り場に京都、奈良など関西各地から新型コロナウイルスの感染拡大で、販路がなくなったお土産が続々と持ち込まれています。

通天閣観光の高井隆光社長(45)が3月中旬から「取引先の支援に」と在庫を抱えた卸売業者から引き受け、ほぼ半額で販売する「支援セール」を始めました。当初は「GWに賞味期限がくる」商品でしたが、いまは「6月、7月が賞味期限」の商品が持ち込まれるようになりました。賞味期限はまだ先なのになぜ? 高井社長に聞くと、そこにあったのは「命をつなぐための在庫の現金化」でした。

支援セールが始まり、1カ月以上が過ぎました。最近、持ち込まれるお土産の“変化”に高井社長は観光業界全体の危機感を感じています。

「お土産に関しては第1ステージから第2ステージに入っています」。当初は観光施設が休館し、返品された商品や賞味期限が近づいた商品でしたが、いまは卸売業者の倉庫にあった6月、さらには7月が賞味期限の商品が持ち込まれています。コロナが終息に向かい、徐々にでも経済活動が再開されたとき、店頭に並ぶはずの商品です。

大事な商品を手放さなければいけない理由について、高井社長は「先が読めないからです。在庫を現金化して会社の命をつなぐ。生き残るためです」と卸売業者の声を代弁します。

こうも話します。

「換金は根本的な治療ではない。急死しないための延命措置でしかない。いまはもう、やせ細り、状況が悪くなりばかり」

通天閣も政府の緊急事態宣言を受け、9日から展望台は臨時休業に入りました。現在は地下のお土産販売と夜間のライトアップだけを続けています。通天閣観光にとっては、ほば利益なしの“支援セール”ですが、「通販も含め、なんとか知恵をしぼってやろうとしているけど、それを上回る環境の変化に追いつけない」。いまは「命をつなぐ換金」で時間を稼いでいる状況です。

人の移動を制限し、経済活動を止めてしまうコロナ。観光業には大打撃を与えています。通天閣の名物社長は言います。

「このままだと経済が回らないことで、人が死んでしまう。経済活動とコロナの感染予防策は交わることはないかもしれないけど、知恵を絞れば、必ず方法はあるはず。国にはメリハリをつけた対策をしてほしい」。

通天閣の展望台には幸運の神様・ビリケンさんに鎮座します。ビリケンさんに毎日のように1日も早いコロナの終息を祈る高井社長。知恵をしぼり続けるというファイティングポーズだけは、忘れません。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)

お土産の“支援セール”をする「通天閣観光」の高井隆光社長(撮影・松浦隆司)
お土産の“支援セール”をする「通天閣観光」の高井隆光社長(撮影・松浦隆司)