1月期の冬ドラマが出そろった。民放主要枠だけで病院モノが5本もかぶり、見ごたえが分散して決め手に欠ける味わい。ドラマファンの1人として「見たいものがほとんどない」という底冷えの冬だ。「勝手にドラマ評」41弾。今回も単なるドラマおたくの立場から、勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(シリーズもの、深夜枠は除く)。

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◆「絶対零度 未然犯罪潜入捜査」(フジテレビ、月曜9時)沢村一樹/横山裕/本田翼

★★★☆☆

ミハン(未然犯罪)シリーズの続編。主人公の深い闇に作風が傾きすぎて、AI捜査のスピードがどこかへ。絶望に沈みながらも歯を食いしばって明るくチームを率いる姿が魅力だったのに、憎悪と幻覚で1歩も進まない腫れ物リーダーに。物語を回す人がいないので、テンポが大変悪い。最終回要素を分解して毎回ちょっとずつ見せる演出と、繰り返される暗い回想。時系列が飛び飛びで分かりにくく、各話の事件との一体感も薄まった。そもそもAI&ビッグデータのミハンシステム自体が有名無実化し、「相棒」の青木の働きと大差ない感じ。新加入した森永悠希の、どんな人物にも化けられる俳優力が痛快。

テレビ東京「病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~」
テレビ東京「病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~」

◆「病院の治しかた ドクター有原の挑戦」(テレビ東京、月曜10時)小泉孝太郎/高嶋政伸

★★★★★

倒産寸前の地方病院を再建したエリート医師の実話。ガーゼから人工関節まで医療材料1万5000点などのデータに圧倒的な現場感があり、抵抗勢力のロジックと、突破口が分かりやすい。よそ者パワーを小泉孝太郎が軽妙に演じ、「ミスしたらどうするんですか」「そんなミスはしないでください」というケロッとした押しの強さが笑える。患者ファーストゆえ決断と行動が早く、2・6・2の法則など、どの社会にも通じる経営論も痛快。おじさんとのキャッチボールからの理事長解任動議など、「カンブリア宮殿」がおもしろすぎてドラマ化という作品の経緯も納得できる。高嶋政伸が久々のいい人キャラではまっている。

フジテレビ連続ドラマ「10の秘密」
フジテレビ連続ドラマ「10の秘密」

◆「10の秘密」(フジテレビ、火曜9時)向井理/仲間由紀恵/渡部篤郎

★★★☆☆

14歳の娘を誘拐されたシングルファーザーの元に「3日以内に娘の母親を捜せ」の脅迫電話。元妻の消息をたどるうち、娘や身近な人々の裏の顔が明らかに。レベル1からの人捜しクエストとはいえ、娘の誘拐なのに幼なじみとランチしてちゃんと家に帰って寝て、という悠長さでこの先戦えるのだろうか。普通人の右往左往を向井理がいいテンションで演じているが、個人的にはこの人がやるべきことの方向性と進捗(しんちょく)具合がざっくり分かる工夫があると助かる。3話で、主人公が「10年前の秘密」を明かして反撃。いい泥仕合になってきた。向井理と渡部篤郎は役が逆な気がする。

TBS火曜ドラマ「恋はつづくよどこまでも」
TBS火曜ドラマ「恋はつづくよどこまでも」

◆「恋はつづくよどこまでも」(TBS、火曜10時)上白石萌音/佐藤健

★★★☆☆

新人ナースとドS医師のラブコメ。「先生に会いたくて看護師になりました」「正気か。身のほどを知れ」。佐藤健がGACKTっぽくしゃべる少女マンガな役作りだが、描きたいものがはっきりしている点で、今期の病院モノの中では潔い。一方通行すぎてヒロインがさばさばしたあたりから原作は面白くなるのだが、3話はまだ「天堂担」と浮かれてミスしてへこむドジッ子ワールド。恋はヘタでも「看護師として必ず戦力になります」の2話の鼻息の方がラブコメとしておもしろかった。患者さんとの関わりの中で、仕事も恋も成長していく馬力を見たい。2話の患者役、金子大地が染みた。

◆「知らなくていいコト」(日本テレビ、水曜10時)吉高由里子/柄本佑

★★★☆☆

「週刊誌記者のお仕事系ヒューマンドラマ」。「系」の中に、父親が伝説の連続殺人犯かものサスペンス、元カレ・今カレとのラブストーリー、お母さんの遺言が「あなたのお父さんはキアヌ・リーブス」のコメディーで、ジャンルが不明。さっきまで恐怖に震えていながら、CM明けでプロポーズされて舞い上がり、それとは別に茶道家スキャンダルや世界的ダンサーのスクープゲット。「私の父親は殺人犯の乃十阿徹なの?」。今後、自身が週刊誌ネタになって自身でスクープする流れだと思うが、役所で戸籍見れば済むような。元カレを演じる柄本佑が物静かで優しくて大人。「イケメンすぎる」とどよめくネットに同感。

テレビ朝日木曜ドラマ「ケイジとケンジ 所轄と地検の24時」
テレビ朝日木曜ドラマ「ケイジとケンジ 所轄と地検の24時」

◆「ケイジとケンジ所轄と地検の24時」(テレビ朝日、木曜9時)桐谷健太/東出昌大

★★☆☆☆

刑事と検事のバディものという切り口は新鮮。容疑者を逮捕し送検する警察、被疑者を起訴し裁判にかける検察。捜査官と法律家という視点の違い、正義の違いがもっとテンポよく捜査とからめば快作の予感はあるが、1話は主導権をめぐってわめく、葛藤のない大騒ぎで終わった。教え子に裏から手心を加えるのが熱血刑事だとは思わないし、罪状と求刑という極秘情報を飲み屋でしゃべる検事像も魅力薄。どちらも単体で共感を得るキャラではなく、カギを握るのは比嘉愛未。2話でブリッジ役としておばかさん2人を動かし始め、ガキのけんかがうまく真相に着地し始めた。頑張って物語を前へ進めてほしい。

フジテレビ木曜劇場「アライブ がん専門医のカルテ」
フジテレビ木曜劇場「アライブ がん専門医のカルテ」

◆「アライブ がん専門医のカルテ」(フジテレビ、木曜10時)松下奈緒/木村佳乃

★★★☆☆

がん専門医の女性バディもの。「患者さんの人生に寄り添う」とか、スローガンみたいなせりふは残念なものの、現場をよく取材しているオリジナルで信頼できる。2話以降、乳がんサバイバーや終末医療など、患者の人生を通したヒューマンドラマが動きだしただけに、主人公の夫が謎の死、その裏にダークな隠蔽(いんぺい)など、地味さ対策のサスペンス要素に混乱する。終末医療、在宅看護ときて、4話は高齢者のうつ。ターゲット層がかなり上で、見守りたいけど気がめいる。ヒロインが提唱する「あせらない、あわてない、あきらめない」の心得は、見る側にも必要かも。

TBS金曜ドラマ「病室で念仏を唱えないでください」
TBS金曜ドラマ「病室で念仏を唱えないでください」

◆「病室で念仏を唱えないでください」(TBS、金曜10時)伊藤英明/ムロツヨシ/中谷美紀

★★★☆☆

僧侶でもある救命救急医の活躍。原作マンガはもっとお釈迦(しゃか)様の教えがカジュアルに展開して笑いと涙、というテイストだが、ドラマでは題材がストーリーにうまくからんでいない印象。せりふを小難しくしないため、「あるがまま」「ありがとう」など、特に仏教でなくてもいい直球ワードにし、患者に寄り添ういいアニキという感じ。「この世は苦」が「必ず出口はある」に着地する原作のように、何事もどんどん仏教で介入していくモーレツキャラの方が個人的には好み。煩悩だらけの人間味や、たすき掛けして僧衣で緊急処置などのビジュアルは魅力的だけに、この先生に、生と死のあっち側とこっち側をもっと教えてもらいたい。

日本テレビ土曜ドラマ「トップナイフ 天才脳外科医の条件」
日本テレビ土曜ドラマ「トップナイフ 天才脳外科医の条件」

◆「トップナイフ-天才脳外科医の条件-」(日本テレビ、土曜10時)天海祐希/椎名桔平

★★★☆☆

トップナイフの座を争う脳外科医たちの群像劇。「コード・ブルー」「医龍」など医療ドラマをけん引する脚本家林宏司氏が、脳の領域を手掛ける。1話は、脳腫瘍で性格が一変する症例。人物と設定の説明であれこれ詰め込みすぎて終わったが、自殺未遂患者の「体の痛み」と、フレゴリ妄想患者の「心の痛み」を同時進行させた2話で“脳の神秘”という作品のテイストは分かってきた。精神科の領域にもかかわるデリケートなジャンルなうえ、レアな症例が多いので感情移入しにくい。Nスペ「人体」みたいなサイエンスか、「奇跡体験アンビリバボー」な切り口の方がはまる題材かと思う。

TBS日曜劇場「テセウスの船」
TBS日曜劇場「テセウスの船」

◆「テセウスの船」(TBS、日曜9時)竹内涼真/栄倉奈々/鈴木亮平

★★★★☆

連続殺人犯の息子として生きてきた青年が、平成元年にタイムスリップして真実を追う。若かったころの両親を鈴木亮平と栄倉奈々が朗らかに演じ、まだ小さな姉兄を含めて21年前の家族が魅力的。この笑顔を守りたいと事件阻止に動く主人公の衝動に共感できる。雪国の大自然を竹内涼真が涙目で走り回っていて、病院の中だけでちまちまと話が進む今期のドラマ界では圧倒的なスケール。加害者家族の針のむしろや、村人全員が怪しいテンプレなど、人の悪意は日曜に見るには気がめいる。栄倉奈々のコントみたいな老けメークにも戸惑うが、竹内涼真がこの役を心を込めて演じ、物語に引っ張る。主演を魅力的に描けるドラマは信頼できる。

◆「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」(日本テレビ、日曜10時半)清野菜名/横浜流星

★★☆☆☆

グレーな事件に白黒つける謎のパンダキャラ&飼育員さんの悪党退治モノ。悪行を公にして社会的地位を抹殺する「ザ・ハングマン」の亜種。今のところ悪党が勝手にしゃべって隠しカメラで世間に筒抜け、というパターンで“公開処刑”のバリエーションに欠ける印象。登場人物たちに必ず暗い過去を設けたがる今どきのテンプレが、アクションドラマのスピードを止めてしまって残念。清野菜名、横浜流星という動ける若手はもっと「任務」に向かって走らせた方が絵になる。アイドル業界の闇や不正入試など、世相を風刺するねらいは上等なだけに、パンケーキメルヘンより、戦う女子力をさっそうと見たい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)