国村隼(61)が出演したベルギー、フランス、カナダ合作映画「KOKORO」(バンニャ・ダルカンタラ監督)が、16年3月のフランスでの公開から1年8カ月を経て、日本で公開された。松田優作さんの遺作となった89年の米映画「ブラック・レイン」で海外の映画に初出演後、ジョン・ウー監督の92年「ハードボイルド 新・男たちの挽歌」や、クエンティン・タランティーノ監督の03年「キル・ビル」に出演と、世界的な監督の話題作に出演。国際的な評価も高い国村が、俳優業について思いを語った。

 -◇-◇-◇-◇-◇-

 国村は「KOKORO」で流ちょうに英語のセリフを口にし、演技派俳優として知られる日本と変わらぬ演技を披露した。海外作品への出演も多く、韓国映画「哭声 コクソン」(ナ・ホンジン監督)で日本人“よそ者”役を演じたことが評価され、16年には韓国最大の映画賞・青龍映画賞に日本人として初めてノミネートされ、外国人俳優初の助演男優賞と人気スター賞の2冠を獲得した。起用理由を聞かれたベルギー人のダルカンタラ監督も「押しも押されもせぬ日本の名優で、世界の監督が演技に魅了されている」と絶賛した。

 -作品選びの基準は?

 国村 やっぱり具体的なものとして、こちらが世界観を読み取り、理解できるツール=脚本が、どれだけのクオリティーで、どんなものがあるのか…そこが最初の取っ掛かりでもあり、ご一緒できるか出来ないかの1番大きなターニングポイントかも知れませんね。

 -「KOKORO」のような考えさせる作品から、痛快なエンタメ大作まで出演作は非常に多岐にわたる

 国村 ははははは…そうですね。僕は映画は、ものすごく間口が広くて、奥行きのあるものやと思っているので、振り切ったコマーシャルフィルムもありゃあ、アート、ドキュメンタリーみたいなのまで含め、あるんじゃないかな。脚本という最初の設計図を見た時に、自分が面白がれるか、面白がれないか…結局、それくらいしかなくて。あまりジャンルにこだわりとかがなくて。これも映画やし、あれも映画やし、と思っているんですね。

 -こわもてと言われるが、おちゃめな表情も見せる

 国村 自分で意図的にそうしているわけでもないんですが、それぞれの作品の世界感があるので、その世界の中の住人になるということです。例えば、「スターマン・この星の恋」(13年、フジテレビ系)では首が360度回る宇宙人までやりました。あれは、ああいう世界観やから、首が回らんとあかんやろと。自分が、お客さんはこれでどう楽しんでもらえるかな? と思えることが、ひょっとしたら自分が楽しんでいることなんですよ。だから、自分が楽しいというのが、本当の意味で基本かも知れないですよね。360度、首が回るヤツなんて、おらんやろう…と思いながら、でも、おったら面白いかもな思えるからやっている部分がある。視聴者への裏切りも、ちょっと入って。

 -当時、キスシーンを演じたことで話題となった有村架純は、その後、朝ドラ女優になり大ブレイクした

 国村 有村君を“壁ドン”じゃなく壁に押しつけて無理やり…だから、私の中ではキスじゃないんですよ。口ふさぎやから(笑い)シチュエーションとして、そういうことですからね。

 -今後、やっていきたいことは?

 国村 特にね…いつも、そうなんですけど、自分で今、これがやりたいとかいう将来というか、先に向けてのビジョンが、ずっとない。別に、どうしても、これをやっていきたいというわけではないんですけども。体が動かんと、できへんようなことは、今のうちしかできへんなと…それは肉体的な1つの要請の話ですけど。あぁ、これやりたいのにと思っても、もう体が動かねぇや…みたいなことには、なりたくないなと。ちょっとでも、時間を延ばすというか、体がちゃんと反応できるような体を維持するためのことは、やりたいかなと。普通のことが普通に出来る、ちょっとした動きが出来る体を維持することはやりたいかなと。

 -青龍映画賞受賞で、海外の仕事も増えるのでは?

 国村 そうあれば、うれしいんですけどね。ナ・ホンジン監督にも言うてあります。「『また、一緒にやろう』って声かけてくれて、大丈夫よ。ただ…体が動けばね」って(笑い)

 車と釣りの愛好家としても知られる。車はエンジニアを目指し、大阪府立高専に進んだほどで、釣りもフライフィッシングでフライを自作するほどで、13年の主演映画「あさひるばん」でも腕前を披露した。

 国村 釣りは最近、行けていないですけど、今年の最後くらいに、行っておこうかなと思っています。車は、もう毎日というか、乗れるヤツを乗っています。

 還暦を過ぎても、人気作への引く手あまたの今、趣味を楽しむ時間はなさそうだ。【村上幸将】