映画「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督(35)の新作「スペシャルアクターズ」初日舞台あいさつが18日、東京・新宿ピカデリーで行われた。

上田監督は冒頭で、公開前に同所と大阪で、キャストと一緒に作品のムビチケカードを手売りした企画を振り返った。その中で、製作費300万円のインディーズ映画ながら、興行収入31億円超と18年の日本映画界を席巻した「カメ止め」の影響がいまだに大きいことを、客らの反応から感じたことに悔しさをにじませた。「映画もメンバーも無名で(観客から)『カメ止めの…』と言われるのが悔しくて…。胸を張って『スペアク』のメンバーと言えるようにしたい」。

その上で、上田監督は「スペアク」への出演が、この10年間で3回目の芝居となった主演の大澤数人(35)を見て「数人にサングラスを買ってやるのが目標です」と言い、大澤らキャストを有名にすることを目標に掲げた。

9月25日に都内で行われた完成披露試写会で、同日に兵庫県から思い切って上京したと明かした上田耀介は、都内の自宅に、いまだに布団がないと明かした。「先日、完成披露の日に手ぶらで上京し、布団がなくて床で寝て、体がガチガチ(ヒットして)布団を買わせて下さい。日本中に広がっていってくれたらと思います」と大ヒットした際は布団を買うことを誓った。

キャストの中で、唯一、演技未経験ながらオーディションに合格した津上理奈は普段、会社員をしている。「今日も有給休暇を使ってきました。笑顔で送り出してくれる上司に感謝。有給休暇は全部『スペアク』に使って、風邪も引かれへん、お盆も休めないという状況ですけど、楽しい」と笑みを浮かべた。

初日には、お忍びで“先輩”も駆け付けていた。「カメ止め」に出演した長屋和彰が、上田監督にも内緒で観客として客席で映画を見て、初日舞台あいさつも見守っていた。9月の完成披露には真魚、しゅはまはるみ、どんぐりの3人が舞台に立ちエールを送ったが、長屋も“後輩”を放っておけなかったようだ。長屋はアジアでの公開決定を聞き「映画は面白かった。もっと、もっといける。海外行くのが当たり前くらいの映画」と太鼓判を押した。

「カメ止め」は、17年11月に東京・新宿K’sシネマで6日間、6回だけのイベント上映で終わるはずだったが、そこで話題を呼び、18年6月23日に同劇場と池袋シネマ・ロサの都内2館で公開された。公開後、上田監督とキャストは連日、手弁当で舞台に立ち、あいさつを続け、観客と語らい、SNSを発信し続けた。血と汗のにじむような宣伝活動、努力によって、作品はSNS上で爆発的に拡散され、41日後の同8月3日に北海道から鹿児島まで全国124館に拡大公開され、最終的には全国375館で上映され、日本テレビ系で放送までされた。

「カメ止め」のメンバーとスタート段階を比較すると、初日舞台あいさつを座席数500人の新宿ピカデリーのスクリーン1で迎えた「スペアク」のメンバーは恵まれている。それでも、長屋は無名からはい上がろうとする“後輩”の姿に「あのころの自分を思い出しました。僕も頑張らないと」と初心に帰り、気持ちを新たに劇場を後にした。