昨年公開の映画「すずめの戸締まり」に出演して話題となった女優、花瀬琴音(21)の初主演映画「遠いところ」(工藤将亮監督)が7日から全国公開される。

沖縄の若年層を取り巻く貧困やDVなどの状況を描き、17歳ながら1児の母としてキャバクラで働く主人公、アオイを演じる。作中では初のぬれ場シーンにも挑戦。このほど取材に応じ、作品に込めた思いや今後の展望を語った。

撮影が行われたのは高校卒業直後。まだ18歳の時だった。映画祭出品などを経てついに全国公開。花瀬は「やっとだなと感じています」と語り「あらためて映画を見ると、私、めちゃくちゃ頑張ってるなと思いました(笑い)。当時はつらいと思ってやっていなかったですし、しっかりとこの思いを届けられるようにとしか思っていなかったので。今は撮影当時からさらに協力してくださる方も増えているなと感じていますし、たくさんの方に見ていただきたいです」と笑顔で話した。

映画は工藤監督の約3年におよぶ沖縄での独自取材を経て完成。全て沖縄で撮影するなど、現地で目の当たりにした現実をリアルに伝えることが意識されている。花瀬もクランクインの約1カ月前から沖縄入りし、アオイと夫のマサヤが暮らしていた家に実際に住み込んで方言や現地の人々の生活を体になじませた。

「この作品に携わるまで、沖縄にある若者の貧困などの実態は知らなかったんです。コザに住んでいたんですけど、夜が明るい街で。子どもがいたり、お店ではお客さんから旦那とけんかしたとか、不倫や離婚をしたという話も聞いたりして、そうした方の思いから役も作ってきました。方言も大変で、ラジオを聴いたり、街のおじい、おばあと話したり、とにかく耳で聴いて少しずつ慣れていきました」。

役はオーディションで勝ち取った。男性相手のけんかシーンを演じた際に、自らやり返したことがスタッフらの目にとまったという。「女の子で殴り返す子があんまりいなかったみたいで。『野性的な部分が見られた』と言われました(笑い)。受かると思っていなかったですし、沖縄での役作り期間でみなさんのお話を聞いていくうちに、しっかりやらなければいけないと責任感も強くなっていきましたね」。

演じたアオイは、17歳ながら1児の母としてキャバクラなどで働き、夫の暴力にも耐えながら貧しい家計の中で懸命に生きていく。「映画を見てくださった人自身がどう思ったのかを大事にしてほしいなと思っています」と口にし「その思いがいつか何かを変えられるかもしれない、ちょっとしたタネになればいいなと。より多くの人に見てもらって、いろんなことを感じてほしいです」。

ぬれ場シーンにも初挑戦した。迷いはなかったといい「お母さんに台本を全部見てもらっていて、大丈夫だと言われて(撮影に)入りました」。ぬれ場や体当たり演技をみせてきた先輩女優らの作品も見てきた中で「自分も30、40歳とかになったらやるだろうなと思っているものが今きたというだけ。自ずとやる道だったので、抵抗感はなかったです」と話し「そういうシーンがあって伝えられる思いや、訴えかけられるものがあると思っているので、作品に必要なものだったかなと思っています」と力を込めた。

映画は6月9日から沖縄で先行公開された。反響は上々だったといい、第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭では最高賞を競うクリスタル・グローブコンペティション部門に日本映画として10年ぶりに選出もされた。「うれしかったですね。これから全国公開されて、沖縄ではない地域の方々からどんな反応があるのかも楽しみです。工藤監督とかプロデューサーのみなさんに恩返ししたい気持ちが強いですし、この作品で賞をとりたいなとも思っています」。

偶然にも、女優を目指したきっかけは沖縄出身の歌姫、安室奈美恵の存在だった。大ファンだった母の影響で自身も好きになり、小学生の頃に演技やダンスなどを学ぶスクールに入った。「沖縄に行ったのは安室さんが引退発表前に宜野湾で行ったコンサートに来て以来でした。私は歌やダンスよりも演技が楽しいなと思って女優の道を選びました。これからも自分が没頭できるすてきな作品を一生懸命見つけていきたいなと思っていますし、いろんな役を演じていけたらいいなと思っています」。

女優としてのキャリアは始まったばかり。ひとつひとつの作品を丁寧に演じきり、これからも活躍の場を広げていく。

◆花瀬琴音(はなせ・ことね)2002年(平14)4月22日、東京都出身。中学時代から舞台やドラマに出演し、22年公開の新海誠監督映画「すずめの戸締まり」で海部千果役を演じて話題に。趣味は散歩、サウナ、食べること。身長159センチ、血液型B