歌手、作家、司会、音楽プロデューサーなど多才に活躍する合田道人氏(62)が、最新著書「歳時記を唄った童謡の謎」(笠間書院)を発表した。
お正月、ひな祭り、端午の節句など、1年間の行事や神事、文化に焦点を当て、そこに関わる童謡や唱歌を見詰め直すという本である。春夏秋冬に分け、4章で構成されている。
「一月一日」「はないちもんめ」「ずいずいずっころばし」「こいのぼり」「かなりや」「夕焼小焼」「どんぐりころころ」「かごめかごめ」など、計36曲の歌詞にちりばめられた本質やエピソード、謎をひもといていく。誰もが知る曲ばかりなので、一気に読め、「こういう意味があったのか」と驚かされる。
BSテレ東の音楽番組「武田鉄矢の昭和は輝いていた」で共演するなど、親交ある武田が「日本の春夏秋冬を歌で感じられるこの本は、子どもたちにぜひ読んでもらいたい」と、同書に推薦文を寄せている。
合田氏は同種の本を数多く出版している。02年に発表した「案外、知らずに歌ってた童謡の謎」(祥伝社)はベストセラーとなり、以後、「童謡の謎」としてシリーズ化されている。
子供だけでなく、大人が読んでも想像力をかき立てられる。
第1章(春)にある「ふじの山」では、かつて富士山(3776メートル)は日本一高い山ではなかったことが解説される。台湾が日本領だった時代、台湾にある玉山(ぎょくざん)が3952メートルで日本一となった。明治天皇が「富士山より高い、新しい日本の最高峰」という意味で「新高山(にいたかやま)」と新たに命名したという。
ここで大人の想像力。「新高山」と聞いて、すぐに思い浮かぶのは、「ニイタカヤマノボレ一二〇八(ヒトフタマルハチ)」だ。1941年(昭16)12月7日に、真珠湾攻撃に向かう連合艦隊に、山本五十六司令長官が打電した暗号電文である。「12月8日午前0時をもって対米英開戦」という指令だった。諸説あるが「日本一の新高山へ登るように、敵を圧倒せよ」という意味が込められたと言われている。
ちなみに「トラトラトラ」は「我、奇襲に成功せり」だが、攻撃中止の暗号は「トネガワクダレ」。攻撃が失敗あるいは不十分な場合は「カワカワカワ」が暗号電文だったという。
同じく第1章の「シャボン玉」では、作詞の野口雨情が生後1週間で亡くなった長女への鎮魂歌として書いたことが記される。これは前述の著書「童謡の謎」でも紹介されたが、あらためて解説した。
「シャボン玉消えた 飛ばずに消えた 生まれてすぐに こわれて消えた」
真相を知ると、悲しい歌詞である。
昨年12月30日に亡くなった歌手八代亜紀さん(享年73)は、画家としても有名だった。絵を描く理由について「純真な子供のころの夢を伝えたい」と話した。そして、数多くの絵に、宙に浮かぶ「シャボン玉」を描いた。八代さんは「絵のシャボン玉は壊れませんから。私が歌手になれたように、子供のころに描いた夢は壊れないというメッセージなんです」と話した。
野口雨情が、歌詞に「風 風 吹くな シャボン玉飛ばそう」と書いた思いと、どこか通じるような気がした。
子供だけでなく、大人の方々にもぜひ読んで、想像力をかき立ててほしい1冊である。【笹森文彦】
◆合田道人(ごうだ・みちと)1961年(昭36)12月13日、北海道釧路市生まれ。渡辺プロダクションから、79年に第2の松山千春として自作の「釧路にて」で歌手デビュー。新宿音楽祭などで新人賞受賞。一般社団法人日本歌手協会(田辺靖雄会長)で理事長の要職を務める。血液型B。



