女優の葵わかな(25)が、ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトの代表作「セツアンの善人」(10月~11月、世田谷パブリックシアターなど)で主演を務めることが3日、分かった。一人二役を演じるほか、劇中では生歌唱も披露。豊かな表現力で舞台を彩る。

葵は近年ミュージカルや舞台で強い存在感を発揮。17年にNHK連続テレビ小説「わろてんか」でヒロインを演じ、19年には初のミュージカル「ロミオ&ジュリエット」で主演を務めるなど、美しい歌声にも定評がある。多方面で磨いてきた実力の見せどころとなりそうだ。

「セツアン-」は1943年にスイスで初演され、今なお、世界で上演される寓意(ぐうい)劇。日本では99年、01年に松たか子主演で上演された。葵は、貧民窟に暮らす心優しき女性シェン・テと、ビジネスに徹する青年シュイ・タという正反対の人物を演じ分ける。

物語は、神様たちが下界に現れ「善人探し」をするところから始まる。シェン・テ(葵)は、神々から「善人である」と認められ、褒美として与えられた大金を元手に商売を始めるが、さまざまな困難が立ちはだかる。お人よしのシェン・テの家には居候が増え続け、しまいには自分の財産まで分け与えてしまう。思案の末、冷酷にビジネスに徹する架空のいとこシュイ・タ(葵・二役)を作り出し、自らがそのいとこに変装をして、邪魔者を一掃するという計画を思い付くが…。善人とは、幸福とは。現代社会にも通じる痛切な問いかけが描かれる。

葵は「演じる役は、お話の中で別の人物を演じ、周りを信じ込ませる役どころなので、難しさもあると思いますが、挑戦できることに喜びを感じています」と難役に腕を鳴らす。演出を手がける白井晃氏も「彼女の柔軟で深い表現力で、新しい『セツアンの善人』を生み出してもらえるものと確信しています」と期待を寄せている。

また、今作は音楽がふんだんに盛り込まれた「音楽劇」の一面も持ち合わせる。劇中演出のミュージシャンのライブ演奏も大きな見どころの1つだ。「稽古の中で試行錯誤しながら、白井さんや共演するキャストの皆さまと、作品を創り上げられたらと思います」と、機が熟しつつある葵の姿にこの秋は注目が集まりそうだ。

▼「セツアンの善人」

【作】ベルトルト・ブレヒト【音楽】パウル・デッサウ【翻訳】酒寄進一(新訳)【上演台本・演出】白井晃【音楽監督】国広和毅【日程・会場】24年10月、世田谷パブリックシアター、11月兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール