山田洋次監督(94)が手がけ、渥美清さんが主演した「男はつらいよ」ファン感謝祭イベントが、1969年(昭44)に第1作が封切られた日と同日の27日に、都内のMOVIX亀有で行われた。3回目の今年は、大ファンの劇団ひとり(49)が初、25年に司会を務めた三平役の北山雅康(59)が2年連続で参加した。

今年は、76年の「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」が上映された。同作が50作で最も好きで、舞台の兵庫県龍野市(現たつの市)の聖地巡礼までした、ひとりは「名シーンだらけ」と絶賛。中でも、渥美さんが演じた寅さんこと車寅次郎と、マドンナの芸者ぼたんを演じた太地喜和子さんとのシーンについて熱く語った。ひとりは「僕が特に好きなのは、ぼたんの借金を取り返しに行くと、寅さんが(倍賞千恵子が演じた妹の)さくらに『縁を切れ』みたいに言うと、ぼたんが泣くんですよ」と昨日、再見したかのように振り返った。

山田監督が「ああいうシーン、寅さんシリーズで他にないのね。芝居としては珍しい」と返すと、ひとりに、さらにスイッチが入った。「ぼたんが『私、幸せ』って言うんですよ。『うれしい』じゃなく『幸せ』。幼い頃に両親を亡くして、弟と妹の面倒を見ながら芸者をやった。男の人に、あまり報われなかったんでしょうね」と考察を加えた。そして「寅さんの全身から出てくる無垢(むく)の愛を感じて。『お金なんて、どうでもいい』みたいに言った瞬間、男と女の関係より、もっと深い愛を感じた」と熱く語った。

山田監督は「あの女優だから、できたというのもある。良い役者だった。太地喜和子さんの、ああいう芝居を見ていると、僕も涙ぐんでるのね」と、撮影中から感動を抑えきれなかったと振り返った。寅さんが車越しに「おい、ぼたん。いつか、所帯、持とうな」と言うシーンについて、ひとりが言及すると、同監督は「太地喜和子さんが、寅さんが車で出て行って、手を上げるでしょ。『さよなら』って言う時、手を上げてピョンピョン跳び上がるのね。あれは前もって、僕が指示していない。うわぁ、素敵な芝居、と車の中で見ていた。良い女優だよ」と、太地さんへの賛辞を惜しまなかった。