演歌歌手の大石まどか(54)が、デビュー35周年を迎えた。10月28日に記念曲「行き暮れて(ゆきくれて)」(作詞・星川裕二、作曲・杉本真人、編曲・佐藤和豊)を発表する。通算42枚目のシングル。大手のサンミュージックプロダクションから、1992年(平4)2月にデビューした。曲折もあったが、独特の歌の世界を築き上げてきた。2回連載の最終回は「艶歌(つやうた)演歌」。

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デビュー時の芸名は本名の大石円で、19歳だった。大御所作曲家・船村徹氏の「恋のしのび雨」がデビュー曲だった。船村メロディーがさえる演歌で、多くの新人賞を獲得する順調なスタートだった。

大石 レールに乗って、楽しく歌って、それが果てしなく続くような、そう思っていましたね。

しかし、徐々に伸び悩むようになった。前のレコード会社で、デュエット曲を除いて、11枚のシングルを発売した。そのうち、7枚のジャケット写真は洋服だった。

演歌中心だったが、歌謡曲調、フォークソング調の作品もあった。方向性が定まっていなかった。

大石 当時はディレクターさんの意向が強かった。しかもレコード会社全体が、演歌から撤退するような状況だった。私も10年目の時に、レコード会社との契約が切れました。

ただ大石の歌唱力に可能性を感じた老舗レコード会社日本コロムビアと、すぐに契約できた。

心機一転、芸名を「大石円」から「大石まどか」に変えた。

そうして臨んだ移籍第1弾「深い川」(作詞土田有紀、作曲弦哲也)が、新生・大石まどかの方向性を決めた。

愛した男への未練心を、深い川に例えて歌った。過去5作連続で洋服だったジャケット写真は、あでやかな着物姿に変わった。

女心の機微を歌う、大石独特の歌世界「艶歌演歌」の始まりだった。

時にしっとりと、時に激しく、ドキッとするような心情も歌い上げる。

<歌詞>返らない 返らない あなたに捧げる前の 私のきれいなからだ…(20年「曼珠沙華が咲いた」)

大石 私は自分(の経験など)を投影するタイプではなく、自分の中で第三者のイメージを作り上げて歌っています。

10月28日にデビュー35周年記念曲「行き暮れて」を発表する。

「行き暮れて」とは、目的地に向かう途中で、日が暮れてしまうことから、旅の心細さや孤独を表す表現である。

事情があって東京から逃れ、2人で遠く離れた港町で新たな生活を始めた。だが、3年たって男性は東京に戻りたい思いが募る。

今の生活を手放したくない女性は、男性の思いを理解しつつも葛藤する。

大石 町の名前は出てきませんが、舞台は私のふるさとの函館です。第三者ではなく、私に置き換えてみたら、あなた1人で行きなさいって背中を押せる気持ちにはなれない。私は、ついていってしまうだろうと思います。

カップリング曲の「初雪」は、25年前に北海道の双子のボーカルユニット「VOICE」(作詞別所秀彦、作曲別所芳彦)に、自らお願いして作ってもらった曲という。

フォークソング調の作品で、若い男女の、初雪のような淡い恋心を歌う。

艶歌演歌を歌い始める時期で、「これを歌いたい」と主張できるほどでもなかったため、ペンディングになっていた。

大石 いつか出したいとずっと思っていました。「行き暮れて」と「初雪」はいい組み合わせだと思います。かたや大人の恋愛、かたや20代の求めてばっかりの恋愛(笑い)。今は演歌を聴かない世代も自分のファンになってくれているので、ある意味、待っていて良かったなと思います。

日本コロムビア移籍後、2枚のデュエット曲を除き、28枚のシングルを発表した。そのジャケット写真は、大石の確固たる方向性を示すようにすべて着物である。

ただライフワークの「生ラ!ライブ」では、豪華なドレス姿を披露する。

「生ラ」とは生演奏と、北海道弁の「なまら」(すごいの意味)を組み合わせた造語で、演歌だけでなく、ポップスも歌謡曲も歌う。

大石 これからは演歌歌手だからではなく、いろいろやっていきたい。SNSを使って、「覆面歌手」になるのもいいんじゃない、なんて(笑い)。

40周年、50周年と、歌手生活は続いていく。

大石 次は40周年と意気込むのではなく、これからの1年1年、地に足をつけてしっかりやる。そうして迎えられる40年になれば、きっと思いもひとしおじゃないかなと思います。

35周年の節目は、大石が新たな1歩を踏み出すスタートラインである。【笹森文彦】

◆大石(おおいし)まどか 本名・大石円。1972年(昭47)9月8日、北海道函館市生まれ。代表曲は「恋のしのび雨」「朝霧情話」「居酒屋『津軽』」「茜の炎」「待ちわびて」など。「春遠からじ」(20年、作詞阿木燿子)は第33回日本作詩大賞優秀作品賞。20年に日本作曲家協会音楽祭で特別奨励賞。特技は社交ダンスで、一般社団法人日本ダンス技術検定機構(NDSL)のスタンダード2級、ラテン1級の資格を持つ。血液型B。

大石まどかが歌手デビュー35周年 大御所作曲家の船村徹氏の仕事場に住み込んだ最後の女性歌手