藤井聡太王位(竜王・名人・棋聖・棋王・王将=23)への挑戦権を争う、将棋の伊藤園お~いお茶杯第67期王位戦挑戦者決定戦、伊藤匠2冠(23)対羽生善治九段(55)戦が28日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた。形勢が目まぐるしく入れ替わる対局は後手の伊藤が乱戦を制して、王位戦初挑戦を決めた。伊藤の2日制7番勝負のタイトル戦登場は、2023年の竜王戦以来。藤井王位との7番勝負は7月4、5日、浜松市で開幕する。終局後に取材に応じた。
ーー目まぐるしい展開でした
伊藤 終盤、香を6筋に打たれた手が自分では気づいていなかった。感覚的には何かしらありそうかなと感じていたが、なかなか分からなかった。(終局後にお互いの手順を振り返る)感想戦で検討してみても、少し先手が指せそうだった。羽生先生にうまく指されていたのかなと思いますね。終盤はちょっとこっちもよくない手がいくつかあったので、反省したい。
ーー角打ちからきれいに決まりました
伊藤 銀を6筋に上がったあたりは負けかと思ってやっていたんですけど。うまく切り返せたと思います。
ーー挑決で羽生善治九段との対戦というのはどのような思いで
伊藤 羽生先生と対局できるということだけでもうれしいことでもありますし、それが今回のような挑戦者決定戦という大きな舞台でしたので、自分の持てるものを出し切っていい将棋になればという思いでした。
ーー今期を振り返って
伊藤 予選から12局、対局したと思いますけど、終盤まできわどい将棋が多かった印象です。1局1局難しい将棋ばかり。その中でこうして挑戦権を得ることができたのは幸運だった。
ーー藤井王位との7番勝負になります
藤井王位とタイトル戦で戦うというのは、常に目標としている。内容的にもスコア的にも拮抗(きっこう)したシリーズにできればいいと思っています。
ーー2日制のタイトル戦は3年前の竜王戦以来。どうような準備をして開幕を迎えますか
伊藤 当時は(藤井竜王と)読みの精度や深さにかなり差があるというのを感じたので、そのあたりの差を少しでも埋めていけるように準備していきたいと思います。
ーー1日制の藤井さんと2日制の藤井さんの違いは
伊藤 前回2日制で対戦した時は、感想戦などでも深いところまで読まれているのを体感できました。1日制でも強いことに変わりはないですけど、2日制だとより指し手の正確さが洗練されている印象が強い。自分で少しでも普段よりもよい内容の将棋が指せるように準備できれば
ーー3冠チャレンジになります
伊藤 自分にとっては3日後(の今月31日)にタイトル戦の最終局(挑戦者の斎藤慎太郎八段と2勝2敗で迎える千葉県柏市での叡王戦5番勝負第5局)が控えているので、そこについては意識するところはないですね。
ーー過密日程をこなした中で成長した部分は
伊藤 対局自体は叡王戦と王位戦ぐらいだったと思う。過密という感じではなかった。1局1局、秒読みまで形勢が不明のまま続くような将棋が多かったので、その中で自分の足りない部分が見えてくるところもありましたし、内容の濃い時間を過ごすことができているかと思う。それについてはいいことかと思います。
ーー藤井王位から唯一タイトルを奪った男として注目されますが
伊藤 前回、2日制で挑戦した時は(4連敗の)ストレート負け。内容的にも競り合いにできなかった。やっぱりタイトル戦に出るからには終盤までもつれるような面白い将棋を指したいという気持ちが強いです。
ーー暑さ対策は?
伊藤 基本、室内の対局ですのでそこまで影響はないんじゃないかと思っています。
ーー藤井さんから1日制5番勝負でタイトルを獲得した唯一の棋士。ただ、2日制でタイトルとった棋士はまだ、いません
伊藤 2日制となると、より1手1手の正確さが問われると思うんですけど、自分自身まだまだ足りない部分が多い。課題だなと感じている。今回久しぶりに2日制で将棋が指せるということで、少しでも成長した部分を出せればいいと思っています。
ーー藤井さんとタイトル戦で4回戦って2勝2敗(23年竜王戦4連敗、24年棋王戦は開幕局で持将棋=引き分け=の後に3連敗。同年叡王戦と25年王座戦は3勝2敗で奪取)。ご自身の方が勝っていると思う部分は?
伊藤 あまりないんですけど、正直なところ。奪取した2回はどちらもフルセット。何というか、そういう意味では自分の方が運がいいというか、持っている部分はあるんじゃないかと思っています。
ーー3年前の竜王戦から自分が1番成長したと思う部分は
伊藤 形勢が苦しい時に、粘り強く指せているというのがいい部分かなと思うんですけど。そのあたりは結果的にみれば、竜王戦時よりは少し成長できていると言えなくもないのかなというところですかね。
ーー持ち時間が長い方が1日制より得意とお話しされていました。2日制の王位戦7番勝負で期するところは
伊藤 得意かどうかはわからないですけど、長い方が好みでもありますし、やりがいを感じるところがあって、より1手1手の最善を追究していきたいという気持ちが最近は強くあるので、はっきりしたミスが出ず、互角のまま終盤に突入する内容の濃い将棋が指せればと思います。
ーー2日制での課題は
伊藤 1日制ですと終盤お互いに時間がなくなり、瞬発力勝負になる。2日制だとそういう局面に持ち込むのは難しい。1日制と違った戦いになる。中盤の精度を上げていければ。
ーー藤井さんの成長ぶりはどう見ますか
伊藤 以前から強かったですが、1手1手の精度が安定して高いと感じています。

