ノーベル文学賞に選ばれた米シンガー・ソングライターのボブ・ディラン(75)の沈黙に、選考主体のスウェーデン・アカデミーのメンバーが21日、「無礼かつ傲慢(ごうまん)だ」などと、ついに批判の声を上げた。アカデミーは13日の授賞発表後、ディランに連絡を試みてきたが、連絡がついておらず、受賞自体や授賞式の出欠の意向も不明のままだ。自らの意思で文学賞辞退となれば、仏哲学者ジャンポール・サルトル氏(1964年)以来2人目となる。

 アカデミー側が、ディランの沈黙についにしびれを切らした。作家らで作るアカデミー(定員18)の一員ペール・ウェストベリ氏はスウェーデン公共放送SVTのインタビューで「無礼かつ傲慢だ」と発言。同氏は「この事態は予測しなかった」と困惑気味に話し、ディランについて「ノーベル賞を欲しくないのだろう。自分はもっと大物だと思っているのかもしれない。あるいは、反抗的なイメージのままでいたいのかもしれない」とした。

 アカデミー側は13日から連絡を試みたが、17日までに接触できたのはレコード会社関係者まで。アカデミー関係者は「これほど長く連絡できなかったことはほとんどない」と話す。

 ディランの公式ツイッターは受賞が決まった13日、09年のノーベル平和賞受賞者の米オバマ大統領の祝福のツイートをリツイートして以来、更新されていない。受賞決定後のコンサートでもコメントせず、最後の1曲はフランク・シナトラの「Why Try To Change Me Now」(なぜ今、僕を変えようとするの?)。公式ホームページには一時、「ノーベル文学賞受賞者」と掲載されたが21日までに削除された。

 授賞式はノーベルの命日12月10日にストックホルムで行われるが、出欠の意向も不明だ。受賞者が式典に出ない例は少なくない。英劇作家ハロルド・ピンター氏(05年)や英作家ドリス・レッシング氏(07年)らは健康上の理由で欠席。オーストリアの作家エルフリーデ・イェリネク氏(04年)は「人前に出るのが苦手」と欠席している。

 平和賞でもミャンマーのアウン・サン・スー・チー氏(91年)や中国の民主活動家劉暁波氏(10年)が拘束中で出席できなかった。

 過去に文学賞を辞退したのは、ソ連の詩人パステルナーク氏(58年)と仏哲学者サルトル氏(64年)。パステルナーク氏はソ連当局の圧力で辞退。ディランが自発的に辞退すれば、64年のサルトル氏以来2人目。サルトルは独立性を保つため、さまざまな賞を辞退したとされる。

 ノーベル財団広報担当者は「辞退の場合、賞金は財団に残るが、メダルをどうするかは実際にそうなった時に考える」としている。