電車内での痴漢を疑われた人物が線路に逃走する事件が、再び発生した。25日午前8時45分ごろ、東京都板橋区のJR埼京線板橋駅で、男が線路に進入したと110番があった。直前に20代の女性が、電車内で男に痴漢をされたと訴えており、警視庁板橋署は都迷惑防止条例違反などの疑いで男の行方を追っている。

 署によると、武蔵浦和発新宿行きの上り普通電車内で、体を触られていることに気が付いた女性が男の手をつかみ、板橋駅で男と降車した。その後、2人は口論になり、男は女性らの手を振り払い、ホームから下り線側の線路に飛び降り、線路を横断。線路脇の柵を乗り越え、線路敷地から出ると、その先のフェンスなどを越え、駅の西側に逃走した。

 都内では3月以降、痴漢行為を指摘された男がホームから線路に逃走するケースが6件発生していた。痴漢が冤罪(えんざい)の場合、ネット上には逃げることを勧める記述もある。

 しかし、鉄道に詳しく法曹レールファンクラブの幹事を務める小島好己弁護士(46)は「逃げる時に振り払ったり、人を突き飛ばしたりすれば暴行罪、線路に入れば鉄道営業法違反に問われる恐れがある」と指摘。「逃げずに、車内で犯人ではないと周囲に伝え、目撃者も探し、自分の身元、連絡先を示す。穏やかに対応し、可能なら弁護士事務所に電話するか、現場に来てもらうことを勧めます」と話した。

 JRの線路を逃走する例は多く、過去には死亡事故も発生。電車にはねられたり、線路下の川に転落するなど、さまざまな危険が潜んでいる。痴漢の疑いから逃れるためとはいえ、あまりに無謀な行動だ。

<痴漢と指摘され線路に逃げた最近の事案(すべて平日)>

 ▼3月13日昼ごろ JR総武線御茶ノ水駅で20代の女性会社員に痴漢と言われた30~40代の男がホームから逃走

 ▼同14日午前9時ごろ JR埼京線池袋駅で、痴漢行為を指摘された40代くらいで身長165~170センチほどの男が逃走

 ▼同29日午後8時25分ごろ JR埼京線赤羽駅で女性に痴漢行為を指摘された男が逃走

 ▼今月5日午後9時40分ごろ JR埼京線板橋駅で痴漢行為を指摘された男が逃走

 ▼13日午前7時45分ごろ JR総武線両国駅で中2、高2の女子生徒から痴漢行為を指摘された身長160~165センチほどの男が逃走

 ▼17日午前9時40分ごろ JR埼京線新宿駅で、20代の女性に痴漢行為を指摘された30代くらいのスーツの男が逃走