年末の風物詩、「現代用語の基礎知識選 2017ユーキャン新語・流行語大賞」が1日、都内で発表されたが、ベストテンの中にスポーツ関連のワードが1つも入らなかった。選考委員特別賞には、陸上短距離の桐生祥秀(21=東洋大)が、9月9日の日本学生対抗選手権で、日本人初の100メート9秒台をマークした「9・98」は入った。

 スポーツ関連のワードがベストテンに選ばれなかったのは、当時早大野球部主将だった斎藤佑樹(現日本ハム)の「何か持っていると言われ続けてきました。今日何を持っているのか確信しました…それは仲間です。」が、選考委員特別賞に選ばれたのみだった2010年以来7年ぶり。

 選考委員の詩人・俵万智氏は「豊作の印象がないのは、ドラマやスポーツからのヒットがなかったからか」と評した。同じく選考委員の女優・室井滋も選評の中で「最近の傾向なのかもしれぬが、今年も世間を騒がせた政治的騒動に付随する言葉が頭に浮かんだ。(中略)ついでに、相撲界の隠語で稽古をサボることを“カマボコ”ということも耳にした」と相撲について触れた。一方で、東大名誉教授の姜尚中氏、漫画家のやくみつる氏、「現代用語の基礎知識」清水均編集長の選考委員3氏は、選評の中でスポーツについて触れていない。

 近年、「新語・流行語大賞」ベストテンに選ばれたスポーツ関連のワードは以下の通り

 11年 「なでしこジャパン」(年間大賞=サッカー)

 12年 「手ぶらで帰らせるわけにはいかない」(ロンドン五輪競泳男子400メートルメドレーリレーで先輩の北島康介氏に対し、入江陵介、藤井拓郎、松田丈志3選手が抱いた思い)

 13年 「お・も・て・な・し」(年間大賞=東京五輪最終プレゼンでの滝川クリステルの発言)

 14年 「カープ女子」(プロ野球広島のファン)

 15年 「トリプルスリー」(年間大賞=プロ野球ソフトバンク柳田悠岐とヤクルト山田哲人)

 16年 「神ってる」(年間大賞=広島鈴木誠也外野手の活躍に対する、緒方孝市監督のコメント)

 「(僕の)アモーレ」(のインテル・ミラノのサッカー日本代表DF長友佑都が妻平愛梨を語る際の呼称)

 リオデジャネイロ五輪翌年、そしてサッカーのW杯ロシア大会前年という“狭間の年”ではあっても、候補30語に入ったスポーツ関連ワードが、9・98(10秒の壁)1つだったことからも、スポーツの話題が乏しかった1年であったことが伺える。

 その中、「新語・流行語大賞」発表の2日前の11月29日に、平幕貴ノ岩(27=貴乃花)へ暴行を加え、負傷させた横綱日馬富士(33=伊勢ケ浜)が福岡県太宰府市内の太宰府天満宮で引退会見を開いたのは、皮肉な偶然と言えるのではないだろうか。