サッカー日本代表FW大迫勇也の活躍を称賛するフレーズ「大迫半端ないって」。ロシア・ワールドカップ(W杯)で火が付いたブームは、60万年前の火山活動で出来た岩に700年以上前に彫刻された、半端ない歴史を持つ石仏にも及んでいる。注目されているのは、大分県豊後大野市の県指定有形文化財「大迫磨崖(まがい)仏」。市内の複数の磨崖仏の中でも、半端ない古さの地層に彫られ、唯一、粘土で表面が造形された半端ない仕上げの石仏だ。関係者は「(大迫を)ぜひ、ご案内したい」と話していた。

 「大迫半端ないって」ブームは、古(いにしえ)の石仏にも波及した。豊後大野市歴史民俗資料館によると、「大迫磨崖仏は、たまたま名前が一緒というだけですが、大迫選手の活躍後、問い合わせが増えている」という。阿蘇山などの大噴火などで起きた火砕流が冷え固まって出来た溶結凝灰岩の地質が広がる「おおいた豊後大野ジオパーク」内にあり「見学者の要望があればツアーやガイドも対応できる」という。

 周辺には、半端ない絶景の崖が多数存在する。これらの崖の岩肌を彫って作られたのが「磨崖仏」。市内には、4つの国指定文化財「菅尾磨崖仏」「犬飼石仏」「緒方宮迫西石仏」「緒方宮迫東石仏」と、2つの県指定文化財「大迫磨崖仏」「普光寺磨崖仏」など、十数体の磨崖仏が点在する。

 多くの磨崖仏は、9万年前の阿蘇山大噴火の火砕流で出来た岩が浸食された崖の岩肌に、平安時代から鎌倉時代までに彫られたとされる。ただ、高さ3・3メートルの大迫磨崖仏だけは「60万年前の知田火砕流で出来た岩に鎌倉時代(西暦1300年ごろ)に彫られたもの」(資料館職員)で、岩の古さが半端ない。他の磨崖仏の表面は岩だが、「大迫磨崖仏だけは表面を粘土で仕上げてある」(同職員)といい、形状から密教などで信仰される高位の如来「大日如来」の座像とみられている。作り手はいまだ、謎という。

 資料館によると「大迫」の「迫(さこ)」は「谷」の意味。市内には「迫」の付く地名も多く、緒方宮迫西石仏の近くには、幅120メートル、高さ20メートルの壮大な「原尻の滝」があり、「滞迫峡(たいざこきょう)」には高さ70メートルの垂直に切り立った柱状の岩の谷が広がる。資料館では、大迫の今後の活躍を願うとともに、「これをきっかけに、豊後大野市の自然と歴史を、ちょっとでも知っていただければと思います」と話していた。

 ◆大迫磨崖仏(おおさこまがいぶつ)大分県と熊本県を結ぶ肥後街道(県道57号)沿いの崖に彫られた大日如来座像。車で行く場合、大分県豊後大野市千歳町の「千歳町特産物直売所」に隣接しており、同直売所の駐車場に駐車可能。徒歩の場合、JR豊肥本線犬飼駅から約5キロ。大分県豊後大野市千歳町長峰1526。