東京・港区が南青山の一等地に建設予定の児童相談所(児相)を含む複合児童施設を巡って、「青山のブランドイメージが落ちる」などと反対する一部近隣住民と区との溝が深まっている。

10月の説明会の混乱の様子はネットで拡散され、今月14、15日の説明会も大荒れとなった。児童相談所は高級住宅地に、なじまないのか。都が管轄する東京都世田谷児童相談所の周辺の住民の声を聞いた。

小田急線・千歳船橋駅から徒歩10分。一戸建てが立ち並ぶ閑静な住宅地に、世田谷児相はある。近くに約50年住む女性住民によると、もともと同地には赤十字社が運営する児童施設があり、一度更地になった後、10数年前に現在の児相が建設されたという。女性住民は「この近所は地主が多い。おおらかな人ばかりで『地域のためになるなら』と、反対運動は全く起きなかった」と話す。

南青山では治安、地価下落に対する不安の声もあったが、女性住民は「世田谷は、都の職員が野良猫まできちんと管理してくれる。人の目があって逆に安心」と、むしろ効果を口にする。児相建設後に付近に一戸建てを購入した中年男性は「この一角だけ(物件が)安いとかはなかった」。千歳船橋駅付近の不動産業者は「(児相に限らず)児童施設の周辺物件は『騒がしいから』などと、入居や売却が遅れるケースはある。ただそれが地価に直結するかというと、そこまでではない」と、地価への影響を否定した。

「南青山ブランド」の主張には距離を取る人が目立った。先記の女性住民は「(物価が高い象徴として報じられた)ネギ1本いくらとか。みんなのためになる施設なのに、バカじゃないの」と否定的。また「児相があることを知らなかった」「存在を気にしたことない。逆にいうとそれだけ自然」と、善悪両面で、周辺への強い影響を否定する意見も複数あった。一方で「住んでいるところにできるのか、あるところに住むのかは全然違う」(中年男性)と、一定の理解を示す声もあった。

南青山の地価は世田谷児相の地区に輪を掛けて高く、大規模な商業施設もあるため、単純比較は難しい。ただ、日曜の16日、休業の世田谷児相に隣接する公園では、雨上がりに元気に遊ぶ子供の姿も。世田谷児相と近隣住民の間に、一見では「溝」は感じられなかった。