15年の「桜を見る会」に、安倍晋三首相の推薦枠で招待された疑いがある山口隆祥氏が会長を務めた「ジャパンライフ」(経営破綻)について、消費者庁が一時、政治的影響を懸念し、預託法違反などの調査を見合わせる「手心」を加えた疑いがにじむ内部文書が存在することが分かった。省庁による安倍政権への新たな「忖度(そんたく)」ではないかと、野党は追及。消費者庁は3日、文書の詳細な内容に言及せず、疑惑は深まるばかりだ。

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この文書は、共産党の大門実紀史氏が2日の野党追及本部で提示した。14年7月、「課長レク」と呼ばれる内部の会議で使われたとされるものだ。

冒頭に「本件の特異性」と記され、同社に関する問題の経緯が記される中で「一時本件敬遠(政治的背景懸念?)し他案件模索するも(略)」「安愚楽(あぐら)牧場の二の舞懸念」などの記述が見える。最後には「政治的背景による余波懸念・外圧的に立入検査の真意を問われる」とも書かれ、政治的圧力が絡むとも読める内容だ。

同庁の担当者は2日の追及本部の会合で、事実関係を確認すると持ち帰ったが、3日も文書の詳細には触れなかった。文書作成者について「内容に関する答えは差し控えたい」と、答弁を拒んだ。「調査をゆがめたことはなく、適正な判断をした」と述べ、特定の政治家の介入はないと否定。「どうして、そうした資料が出回っているか分からない」と話す場面もあった。

同社は14年9月に消費者庁の行政指導を受けたが、その翌年に送られた「桜を見る会」の招待状を宣伝に悪用、被害拡大を招いたとの指摘がある。野党側は、最初から行政処分されていれば招待状は届かず、被害拡大を防げたと主張。会合に出席した被害者Aさんは「招待状を見て山口(元会長)の男が上がり、みんな信用した」と指摘、東京電力福島第1原発事故の賠償金約9000万円を出資し、被害を受けたBさんは「被害者の声を首相に届けたい」と話した。

招待状に関し、消費者庁側は同社への立ち入り調査時に「確認していない」と述べたが、大門氏は「この資料は、立ち入り検査で消費者庁が入手したものだ。うそを言っているか、調べ切れていないかだ」と、4日も追及を続ける構えを示した。【中山知子】

◆ジャパンライフ 磁気治療器購入者が知人にレンタルすれば、年6%ほどの収入を得られる預託商法の「レンタルオーナー契約」を展開。周囲に宣伝した購入者が年6%の活動費を受け取れる「誘引販売契約」も展開した。消費庁から預託法や特商法違反などで何度も行政処分を受け、18年に破産。負債総額は17年3月末時点で2405億円。同年7月末時点の預託会員は、高齢者を中心とした6855人に上った。誘引販売契約は連鎖販売取引(マルチ商法)と認定された。