新型コロナウイルス肺炎の感染拡大で一般ランナーの出走中止となった東京マラソン(3月1日開催)の参加費が返金されないことをめぐり、弁護士で前衆院議員の若狭勝氏(63=元東京地検特捜部副部長)は18日、返金しないのは「不当利得」にあたる可能性があると指摘した。東京マラソン財団は中国在住(国籍を問わず)のランナーに来年の参加料を免除するとしていたが、一般ランナー同様に返金しない検討に入ったことも明らかになった。

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東京マラソンを主催する「東京マラソン財団」は一般ランナーの参加費を規約に基づいて返金しないことを明らかにしている。大会公式サイトによるとマラソンの参加費は1人1万6200円(海外1万8200円)でいずれも前年比5400円アップ、10キロは5600円(海外6700円)でマラソンの定員は3万7500人、10キロは同500人。単純計算で参加費の合計はマラソンが6億750万円、10キロが280万円で概算で約6億1030万円となる。今回の参加費は戻ってこない上に来年の出走には、新たな参加費が必要となる。チャリティーの寄付金も返還されない。

今回の問題を若狭氏は「『不当利得』にあたるのでは」と指摘する。不当利得とは、民法第703条から708条で契約など法律上の原因がないにもかかわらず、本来利益を受ける者の損失と対応する形で利益を受けること。今回のケースでは返金されない一般ランナーは損失となり、主催者側が利得(利益)となる。若狭氏は「一般ランナーは走れないがエリートの部などは実施されるので、物理的に開催できない訳ではなく、大会そのものの中止ではない」と一般ランナーの不利益であることを説明する。

大会規定によると、参加費は、積雪、大雨による増水、強風による建物などの損壊の発生、日本国内における地震やJアラート発令、関係当局からの中止要請など以外では返金しないとされている。若狭氏は「大会直前に自然災害などが発生したのではなく、開催まで2週間ほどある。感染防止の政策による不可抗力としても、参加費をまるまる全額返金しないのは一方的で理解できない」と首をかしげた。

また、東京マラソン財団は当初6日、中国在住(国籍を問わず)の参加者が出走しなかった場合、参加費を返金せず、来年は別途参加料が必要としていた。14日に、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために中国人ランナーの来年の参加費は免除すると追加発表していたが、一般参加の中止を受けて「免除」を撤回で本格的な検討に入った。17日、中国人参加者に対し、撤回を検討していることを中国語でアナウンス。近日中に、正式発表を行う予定だ。【大上悟】