東京・築地の波除神社で30日、毎夏恒例の厄よけの茅輪(ちのわ)が設置された。

毎年6月第1週に実施される厄よけの祭礼「つきじ獅子祭」の準備として設置される茅輪だが、今年は新型コロナウイルスの第2波感染防止に配慮して、開催の中止が決定していた。

ただ厄よけ参拝の要望が多数寄せられたこともあって、波除神社では「まだ、外出などもままならないこともあるとは思いますが、茅輪くぐりが厄よけにもつながるため設置することにした」と話し「ただし、茅輪くぐりで行列ができるようなことがあれば、ソーシャルディスタンスの確保などはしていかなければいけない」と、新型コロナウイルス感染防止策なども講じる考えも示した。

波除神社には世の中の災厄を飲み込むとの伝説もある獅子頭が奉納されており、その獅子頭の内側には平安時代の武将源為朝(ためとも)の鎧(よろい)姿の札が貼られている。百発百中の弓矢名手で知られており、古来為朝の名前を書いた札を家にはると為朝のあまりの強さに疫病が退散すると伝えられてきた。

波除神社では、ご神宝として為朝が使ったとされる大弓が奉納されていたが、1923年の関東大震災で社殿とともに焼失してしまった。

つきじ獅子祭では初穂料を納めた氏子に為朝の神符(札)を配っていたが、今年は祭が中止になったため、異例ではあるが5月1日から社殿で1枚1000円で販売していた。これまでに約80枚の神符が売れているという。

波除神社では、9年前の東日本大震災の直後に「波除御守」と刺しゅうされたお守りが売れたことがあった。疫病を退散させるとして九州の妖怪アマビエが注目されていて、関東地区でも由来のない寺社がアマビエの札を販売する事例も出てきている。

波除神社では「アマビエに関連したものはないか、との問い合わせもありますが、ここは築地だし、江戸時代のころよりずっと為朝公に疫病から守っていただいた。新型コロナウイルスの拡散防止で為朝公には活躍していただきたい」と話している。【寺沢卓】