あの黒くて巨大な謎の鳥はなんだ!? 千葉県柏市の手賀沼周辺ではアフリカに生息する「ミナミジサイチョウ」の目撃が相次いでいる。目や首の周辺は真っ赤で、羽を広げると約2メートルの大きさ。ヘビやカエルを丸のみする姿は住民たちに恐怖も感じさせる肉食の絶滅危惧種だ。茨城県内のペット販売店から一昨年に逃げ出し、捕獲には至っていない状況。3日、目撃者の1人、柏市立手賀東小の佐和伸明校長(58)が目撃情報を証言した。横浜市のアミメニシキヘビ騒動から約2週間。今度はアフリカの怪鳥の大捕物劇が始まりそうだ。

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アフリカのサバンナ出身です。人に危害は加えません…。そう言っているかのように、こうべを垂れながら歩く姿が印象的。今年2月3日、「校長先生、黒くてデカイ鳥がいる! カラスじゃないよ、早く来て~」。児童らの叫びに飛び出すと、得体の知れぬ黒い鳥が羽ばたいてフェンスを越えていった。

佐和校長は「すぐに子どもたちが図鑑で調べて、これだなと」。以降、子どもたちや周辺住民からも目撃報告が届き、自身も5月28日の通勤中、梨農園のネットで休む姿を見て、5度目の再会を果たしたばかりだ。「初めは違和感のある大きさ。ハクチョウの黒い版って感じ。子どもたちに襲ってくるような鳥ではないようですが、明らかに怪鳥ですよね」。突然の訪問鳥に「絶滅危惧種とか、サバンナから来たとか、地域の自然環境や生態系に興味を持つきっかけをくれた」と教育にも役立った感謝の意も示した。

一昨年、茨城県の猛禽(もうきん)類販売店から逃げた鳥だったことも判明した。これまでの目撃情報は茨城県南部から千葉県北部の広範囲に及ぶ。店主は情報を頼りに定期的に捕獲作業に尽力している。だが、アミメニシキヘビなど場合によっては人に危害を加える可能性が高いとされる動物とは違い、犬や猫の逃走と同じ扱い。遺失物届を自治体などに提出しても、捜索協力を得るには至っていない。アフリカではサイの角のように固いくちばしで家屋周辺のヘビやサソリなどを食べてくれる益鳥として飼育されているケースもある。

山階鳥類研究所の平岡考さんは「距離は短くても飛べるので素手でひょっと捕まえるのは難しい。かといって狩猟のようにしてしまうと鳥獣保護法に引っ掛かってしまう部分もある」と説明。外来生物であることから生態系を崩す懸念もあり「飼い主に戻すことは、鳥の幸せ、自然環境のためにもなる」と、少しでも早く捕獲すべきだと強調した。柏市の担当者も市民の安全を第一に、要望があれば協力を検討する意向。「体は大きいので、見つけても近づかないでほしい」と呼び掛けた。【鎌田直秀】

◆ミナミジサイチョウ サイチョウ目ジサイチョウ科で絶滅危惧種に指定されている鳥。中央~南部アフリカのサバンナに生息。ヘビ、トカゲなどの爬虫(はちゅう)類や昆虫などを食べる肉食性。草原の掃除屋の異名。大きな個体は全長で130センチ、6キロに成長する。両翼を広げた長さは約2メートル。全身が黒色で、のどと眼の付近が鮮やかな赤色。飛翔距離が短く、歩いて移動することの方が多い。夜間は天敵に襲われないように樹上生活をしている。寿命は50年近いとされている。埼玉県こども動物自然公園では09年に日本初の繁殖に成功。