日本大は1日、理事会を開き、作家の林真理子氏(68)の新理事長就任を正式決定した。林理事長は東京・千代田区の日大会館で会見を行い、自身が命名した「N・N」(NEW NIHON UNIVERSITY=新しい日大)のキャッチコピーを掲げた。今まで女性が皆無だった理事会について、理事22人中女性9人を起用するなど体制を一新。田中英寿元理事長(75)の脱税事件など一連の不祥事には「大規模調査委員会」を設置して「脱田中」を徹底する方針を表明。日大の新生を誓った。

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林理事長の母校新生計画は、目にみえる人事改革から始まった。これまで1人もいなかった女性理事だが、自身を含めて現時点で決まっている新理事22人中9人を女性に。「新しい風が吹いている」と手応えを口にした。

「女性だからどうのこうのって言うなと言われるのですが」と前置きしたうえで、「女性の力はすごいものがある」と持論を展開。「女性がいる会議は長くなるとおっしゃった人もいましたけれど…」と東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の会長を辞任した森喜朗元首相の問題発言も引用しながら「活発になって面白い。それだけでも女性を増やして良かったと思う」と語った。「昇進とかで不利な立場に置かれていたぶん、人の心が読めますし、活躍の場を与えられた時のエネルギーはすごい」と続けた。現在は7人しかいない女性管理職も増やしていく意向も示した。

日大が決別まで宣言した「脱田中」をめぐっては「かなり時間はかかると思いますが、徹底的にやりたい。これをしないと本当の意味で信頼を得ることは出来ない」と強い姿勢を示した。これまでの日大の調査では「私自身も『これだけなのかな?』という疑念を拭い去ることが出来なかった」とし「セカンドオピニオンと思っていただければいい」と大規模な調査委員会を再び設置し、任期の4年を費やしても徹底的に再調査するとした。現在の学内には「前理事長につながるような方々はいないと信じている」と言及した。

自身の田中氏との関係については「130周年の記念パーティーでお会いしていた。アメフット事件のあと。『あ、本物だ』と思って写真を撮らせていただいた。あの2ショット写真が出てきちゃうとまずいかなと思いますが…」と明かした。

教職員や学生との対話も重要視。複数の教職員からは手紙やメールで現況を“告発”する声も届いている。「学部を1つ1つ訪ねていこうと思う。中庭とかで車座で話して『こうしてほしい』『こういう施設をつくって』など意見を吸い上げたい」。すでに教職員数人ずつとのランチ会も提案している。真の信頼回復の指標として「3年後には志願者数1位の大学にしたい」。1時間半にわたる所信表明に思いを込めた。【鎌田直秀】

○…林氏は作家としての活動については理事長職に重点を置きながら継続することを明かした。「本当に悩ましいところですが、連載のいくつかはやめます。秋から始まる小説は来年にまわします」。多方面での役職も可能な限り続ける意向で「直木賞選考委員は本を読むのは呼吸をしているようなものですから続けます。作家であることは私のアイデンティティー。日大をないがしろにするわけではない」と“二刀流”で士気を高める。

<日大不祥事を巡る経過>

2008年9月 日本大理事長に田中英寿氏が就任

21年9月 医学部付属板橋病院の建て替え工事を巡り、東京地検特捜部が背任容疑で日大本部や田中氏宅などを捜索

11月29日 所得税法違反容疑で田中氏を逮捕

12月1日 田中氏が理事長辞任

10日 日大が記者会見し、田中氏と「永久に決別」

22年3月29日 東京地裁が田中氏に執行猶予付き有罪判決

4月7日 日大が次期理事長を学外者とし、理事も一新するとの報告書を文部科学省に提出

13日 田中氏の有罪確定

6月3日 次期理事長に作家林真理子さん選出

7月1日 林さん理事長に就任