昨年死去した安倍晋三元首相の弟、岸信夫首相補佐官(63)が、近く議員辞職する方向で調整していることが14日、政界関係者への取材で分かった。

早ければ2月の見通し。岸氏は山口2区選出。近年は体調を崩し、昨年12月には、自身は次期衆院選に出馬せず、秘書を務める長男の信千世(のぶちよ)氏(31)を後継とする考えを周囲に伝えている。岸氏が3月15日までに辞職すれば、4月23日投開票予定の衆院補選に山口2区が加わる見通しだ。

山口では安倍氏の死去に伴い4区でも補選が行われる。岸氏が辞職すれば、県内の4選挙区中、兄弟が議席を持っていた2つで異例の「ダブル補選」となる。

山口は現在4選挙区とも自民党が議席を独占する保守王国。ただ、10増10減に伴い選挙区が1つ減ることが決まり、次期衆院選の山口新1区~3区の自民党内の候補者調整は、有力議員が多いだけに、相当な難航が見込まれる。公認候補を決める際は「現職重視」との見方が強く、次期衆院選に新人として臨むか、補選で勝利して議席を得た上で現職として臨むかでは、候補者調整の際の扱いも変わるとみられている。

岸氏はこれまで、今の任期中は議員を続ける意向を周囲に伝えたとされていたが、息子に確実に地盤を継がせることを念頭に、辞職の時期が早まるとの見方は強かった。その場合、あからさまな「世襲」として批判が強まる可能性もある。

山口4区では、最終的に安倍氏の親族が出馬せず、安倍氏の後援会や昭恵夫人の信頼が厚い下関市議の吉田真次氏(38)が昨年末、出馬を表明。自民党県連は公募を行い、最終的に候補を決めるとしている。

安倍家の親族が山口4区の補選に出ないことで、当面、山口から「安倍」の名前が消える。一方、岸家は岸信介元首相の家系で、「ゴッドマザー」と呼ばれる、安倍氏、岸氏の母洋子さんは岸元首相の娘。関係者は「せめて『岸』の名前を確実に残すため、世代交代の時期を早めたのではないか」と推測した。

◆4月の衆院補選 1票の格差をめぐる最高裁判決が3月15日までに確定すれば4月23日投開票となる。山口2、4区のほか、岸本周平氏の知事選出馬に伴う和歌山1区、自民・薗浦健太郎氏が「政治とカネ」で辞職した千葉5区を含め、計4選挙区になる見通し。

補選は国政選挙で、時の政権に「直近の民意」が示される場となる。特に千葉5区は自民党への逆風が予想されている。菅政権時代の21年4月の補選は、不戦敗を含めて自民党が3戦全敗。「選挙の顔」の資質に疑問符が付いた菅氏は、結果的に退陣した。5月の広島サミット後、岸田首相が衆院解散・総選挙に踏み切るとの見方もある中、今回の補選の結果次第では、岸田首相の解散戦略にも影響する可能性がある。

 

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