もう1人のヒーローの物語があった-。今回の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」の主役は、ダービーを制したクロワデュノール(牡3、斉藤崇)を担当する間宮辰徳助手(43)。サッカー仲間として一緒に汗を流している大阪・原田竣矢記者が、これまでの道のりに迫った。
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ダービーウイークの火曜夜、栗東トレセン近くのグラウンドにはいつもと変わらない間宮さんの姿があった。「皐月賞の時は緊張したけど、今回はそんなに緊張していない」。小学生から高校生まで夢中になったサッカーで、大一番前の時間を過ごした。
競馬との出会いは本人いわく「たまたま」のことだった。「小さい頃から動物が好きで、いつか動物に携わる仕事に就きたいなと。動物園とかも考えた」。さまざまな選択肢がある中で、中学生の頃から競馬が好きだったこともあり、高校卒業後は乗馬クラブのバイトを経験。その後、競馬雑誌の広告でたまたま見かけた、愛知県豊田市のイクタトレーニングファームへと籍を移した。
JRA競馬学校を経て、勝負の世界へと足を踏み入れたのは05年だった。五十嵐厩舎からキャリアが始まり、藤岡範、石橋厩舎で経験を重ねて、現在の斉藤崇厩舎のメンバーに名を連ねた。20年にはマンオブスピリットで初めてのダービーを経験(16着)。2度目のダービーとなった今年、クロワデュノールとともに、最高の景色を目の当たりにした。それでも「実感はない」と答えはさっぱり。なぜなら彼には勝利よりも大切なものがあるからだ。「無事に帰ってきてくれるのが一番」。ビッグタイトルを獲得した後でもそう話す、真っすぐな瞳の奥には、ある馬の記憶が映っていた。
それは五十嵐厩舎でトレセンスタッフとしての人生をスタートさせた05年のことだった。9月4日小倉6Rの3歳未勝利戦。彼にとって、担当馬が出走する初のレースだった。馬の名前はエーケーラッキー。期待と不安が入り交じる中、愛馬はレース中にけがを負い、最終的に安楽死の判断が下された。つらく、悲しい出来事に「本当に辞めようと思いました」。家族にも相談し、この仕事を離れることを本気で考えたが、大好きな競走馬の命を自らの手で支え続けられる道を選んだ。
忘れられない経験があるからこそ、前を向き続けることができる。「次があるから浮かれていない。毎週責任があるから。この仕事は大変だし好きじゃないとできない」。動物が好き、馬が好き、競馬が好き。すべての原点とも言えるこの純粋な心が、愛馬を世代の頂点へと導いた。
◆間宮辰徳(まみや・たつのり)1981年(昭56)8月17日、静岡県生まれ。小3から始めたサッカーは高3まで続け、サッカー元日本代表FW高原直泰と対戦した経験も持つ。現在は栗東・斉藤崇厩舎の調教助手。
(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)



