男子競歩20キロで東京オリンピック(五輪)の代表に決まっている山西利和(24=愛知製鋼)が、5000メートルを18分34秒88の日本新記録で優勝した。従来の記録は鈴木雄介の18分37秒22だった。

日本記録を更新しても、山西に浮かれた素振りはなかった。「いまの地力なら、コンディションが整えば(日本新は)出るとわかっている。想定の範囲内のタイム」と、京大出身の知性派アスリートは冷静に分析。「3秒程度しか更新できなかった。いまの競歩界のレベルなら、誰でも超えることができるような記録」と満足していない。

冷たい雨が降るなか、自らレースを引っ張った。残り4000メートル付近からは、同じく東京五輪20キロ代表の高橋英輝(富士通)とのマッチレースに。残り2500メートル付近から高橋との差を広げにかかり、その後は一人旅となった。

世界選手権金メダリストは、1年後に延期された東京五輪だけでなく、さらにその先も見据えながら競技に取り組んでいる。「東京だけを見ていたら、東京では勝てない。その先の世界陸上や、パリ五輪まで勝ち続けていくぐらいのイメージを持つことが、結果的に東京で活躍できる近道になる」。

この日の日本記録はあくま通過点と捉えるが、手応えをつかむレースとなったことは間違いない。「20キロの世界記録は射程内に入ってきている」。クールな口ぶりに、強い自信が溢れた。【奥岡幹浩】