男子ゴルフのマスターズで日本人初のメジャー優勝を果たした松山英樹(29=LEXUS)が11日、マスターズ以来、約1カ月ぶりの復帰戦となるAT&Tバイロン・ネルソン(13日~16日、米テキサス州)の公式会見に出席し、東京五輪について言及した。初の金メダル獲得へあらためて意欲を見せた一方で、コロナ禍での開催には「一概にオリンピック、オリンピックというのは僕は考えられない」と懐疑的な意見を示した。

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複雑な心境は隠せなかった。松山は東京五輪の実施について問われ「本当に何と言えばいいのかわからないですけど」と前置きし、「本当に無事に開催されるのであれば金メダルを目指したい。だけど、今、日本はすごく感染者数も増えて大変な状況だと思うので、一概にオリンピック、オリンピックというのは僕は考えられない」と語った。

コロナ禍の収束が見えない中での五輪開催をめぐっては他競技のアスリートらからもさまざまな意見が出ている。松山は4年に1度の五輪へかける他競技の選手らの気持ちに理解を示しつつ「その人たちにも(五輪を)やってほしい気持ちはあります。でも今の日本の状況を考えるとそれはどうなのかなとか、いろんな複雑な気持ちではいます」と真剣な表情で述べた。

松山はこれまでも東京五輪出場とメダルへの強い思いを口にしてきた。一方で、同じく代表選出が濃厚だった16年リオデジャネイロ大会時はジカ熱と治安を理由に出場を辞退。松山だけでなく多くの有力選手がジカ熱や日程面を理由に出場を見合わせるなど、今回の言葉にはゴルファーにとって五輪が最大の目標とは言い切れない事情もあった。

今回も五輪で男子ゴルフが行われる7月最終週の2週前に全英オープンが開催されるなど、五輪前後に重要な大会が控えており、過密日程や移動面の問題から既に世界ランキング1位のダスティン・ジョンソンらが出場辞退を表明。ゴルフの五輪代表は6月末の世界ランキングを基に決定するが、同15位の松山の出場は確実。言葉を選びながら慎重に語る姿に、もどかしい葛藤がはっきり伝わってきた。【松尾幸之介】

○…松山は約1カ月ぶりとなる復帰戦へ向け「自分の状態を上げることが先決」と慎重な見方を示した。マスターズ直後に日本へ帰国し、先週末に再渡米するまでは2週間の隔離期間を含め、ほとんど練習をしていなかったという。日本滞在中は家族らに会っていたという。マスターズ制覇で心に余裕が生まれたと明かし「これからもさらに優勝できるように、日本にもいい影響が与えられるように頑張っていきたい」と話した。