フットボール金融論 ~レアル・マドリードMBA卒・酒井浩之~

新型ウイルス騒動で棚上げ? マンCのFFP問題

益々その影響が広がっている、新型コロナウイルス。ついにオリンピックは延期、そして欧州チャンピオンズリーグ(CL)、欧州リーグ(EL)、そして欧州選手権も延期となりました。改めてこのコロナウイルス騒動の影響を念頭に起きつつ、FIFAファイナンシャルプレー(FFP)について振り返ってみたいと思います。

まず導入されたのはどういう経緯であったのか。FFPの制度は2011-12シーズンから対応が始まりました。導入の背景にあったのは、当時ヨーロッパサッカー界全体に蔓延していた慢性的なクラブの借金でした。目先の勝利を追い求め、収入よりも大きな資金を半ば無理矢理借り入れ、もしくは巨額な移籍金を長期にわたる分割払いでまかない、気がつけば大きな借金が残っているということがクラブに大きな負担となり、最終的には支払い困難な状況に陥り破産に至るということが頻繁に起こっていました。

オーナーによる赤字補てんを試みるも、その資金が尽きてしまうと最終的には破産するという負の流れがそこにはあり、パルマやリーズなどは当時リーグを代表するクラブでしたが、今では名前も聞くことは少なくなりました。このような背景・歴史から、欧州サッカー連盟(UEFA)がFFPにおいて収入を上回る支出を禁じているだけでなく、オーナーによる赤字の穴埋めを禁じましたが、一度立て直しに失敗したチームはなかなか立て直せないのが現実です。

もしもこのクラブ単体の赤字禁止やオーナーの私財による赤字補てんを禁止せず、何か別の対応をしていたとしたら、今頃果たしてどうなっていたのでしょうか。昨今のJリーグも徐々に規模が大きくなってきているチームが出始めていますが、そもそもの収入財源の単価を上げていくか、もしくは新しい収入財源を創出・獲得していかないとなかなか全体的に市場自体が大きくなっていきません。そういう意味ではオーナーの私財を赤字補てんに使用できるということはマイナスばかりではありません。

そしてつい先日、マンチェスター・シティーがこの定められたFFPのルールに反したということでCLを含めたUEFA管轄のトーナメント参加の資格を剥奪されるという決定が下されました。現在審議中にはなるようですが、サッカー界にとっての大切な顧客(資金提供者の意)の問題点を指摘した形となりました。

それがこのコロナウイルスの一件で全て吹き飛んでしまったように感じます。その前に選手をどう守るのか、リーグはいつから再開できるのか、世界的に初めてのことが多く、対応の決定に四苦八苦している様子が見えます。世界中を巻き込んでいるこのコロナウイルスによる一連の騒動が早く収まって欲しいものです。このままでは8月の移籍マーケットが歴史的に動かない、などということも十分にありえます。

またあの世界中を熱狂の渦に巻き込むスポーツの巨大なパワーを感じることができる日が一刻でも早く戻ることを切に祈ります。

◆酒井浩之(さかい・ひろゆき)1979年8月24日、愛知県生まれ。幼少時よりサッカーに打ち込み、大学卒業後は広告代理店やスポーツメーカーに勤務。2015年3月にレアル・マドリード大学院スポーツマネジメントMBAコースに日本人として初めて合格。卒業後、レアル・マドリードへ同コースから唯一選出され入社。17年6月退社。現在はスペインと日本を行き来しながらスポーツビジネスのコンサルティングなどを手掛けている。

おすすめ情報PR

サッカーニュースランキング