天皇杯決勝でヴィッセル神戸が2-0で鹿島アントラーズを下し、初タイトルを獲得した。両チームにとって“節目”になる結果となった。

内容的には神戸が守備力で上回った形だ。決して90分間走り切れたわけではない。イニエスタやポドルスキは後半になると足が止まってしまう。その分、古橋や藤本が頑張っていただけだ。この試合に勝ってACLの出場権も得て、喜んでいるだろうが、ここで冷静になってほしい。

リーグ戦では優勝争いはできなかったし、失点も多く、ポドルスキやビジャはフルで働けていなかった。シーズンを通して振り返って、ベテランやビッグネームをどう生かすか、ビジャの抜けた後をどうするか? この優勝に満足せず、補強をより真剣に考えてほしい。そうでないと、来季のリーグ戦とACLを並行して戦うのは難しいはず。この日の勝利は「新しい国立競技場での初タイトル」という“思い出”で終わってしまう。

スター選手を獲得して、念願の初タイトルを取った神戸を見て、他クラブが続くだろうか? 現時点では「うらやましいけど、うちには予算がないから」という感じだろう。Jリーグのクラブは、まだ親会社に依存する予算社会で、例外は神戸くらい。Rマドリードが大物を獲得したから、バルセロナも相応の選手を取って対抗する、というレベルじゃない。だけど、神戸がこの路線でリーグ戦連覇や年間3冠を達成したら、変わるかもしれない。神戸にはイニエスタやビジャ以上の選手を連れてきてくれることを期待する。

さらに言えば、黄金期の鹿島に勝てば金星といえたが、今回は海外移籍者や故障離脱者の多さなどから、1年前とは別チームのようだった。長い鹿島の歴史の中でも人材的に苦しい時期だ。経営基盤が変わるタイミングで、鹿島も新しいチームに変わる転換期に来ているといえる。(日刊スポーツ評論家)

神戸対鹿島 優勝し胴上げされる神戸FWビジャ(撮影・河野匠)
神戸対鹿島 優勝し胴上げされる神戸FWビジャ(撮影・河野匠)