国際サッカー連盟(FIFA)が、米国代表FWフォラリン・バログン(25=モナコ)の出場停止処分を1年間猶予すると発表し、ベルギー戦のプレーが可能になって世界中から批判されている問題で、日本のFIFAカウンシルメンバー(理事)も疑問を呈した。
15年の当選からカウンシルで活動し、日本サッカー協会(JFA)では名誉会長を務める田嶋幸三氏(68)が日本時間7日、滞在先の米国から日刊スポーツの取材に応じた。国内外でサッカー界の発展に尽力してきた立場から、この問題は看過できず「判断の基準が分からない」と言及した。
バログンは1日(日本時間2日)の決勝トーナメント1回戦ボスニア・ヘルツェゴビナ戦で、大会3点目を挙げた米国のエース。先制点で16強入りに貢献したが、後半19分にレッドカードを受けて一発退場していた。
意図の有無は関係なく、球際の接触プレーでスパイクの裏が、相手の足首に間違いなく入っている。
退場。当然、次の試合は出場停止になるところ、まさかの介入で“撤回”されて問題化した。
バログンが6日(同7日)の決勝トーナメント2回戦ベルギー戦に出られないことは、本人も理解していたはずだが、FIFAが処分猶予を発表。その前段として、ドナルド・トランプ米大統領(80)がFIFAのジャンニ・インファンティノ会長(56)に電話し、処分の見直しを求めるという前代未聞の行動が発覚していた。
電話があったことは、トランプ氏だけでなく、インファンティノ会長も認めている。FIFAが米国に有利な決定を下した可能性が否定できなくなり、公平性や政治的中立性が問われている。
この状況に、田嶋氏が口を開いた。「意図的に足首を狙ったとは思わない」と、退場に至ったバログンのプレー自体は、冷静に映像を見返しつつ、結果を重視。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の末に退場処分が下されたため、判定は絶対で、尊重される以外にない。
ところが、最低でも1試合の出場停止という大前提のルールがねじ曲げられた形に「VARの制度そのものに関わってくる。VARを導入した意味がなくなる」と懸念した。
さらに「VARの適用事項にレッドカード、イエローカードの間違いの訂正とある。試合中に撤回されていれば問題ない。しかし、試合が終了した後に外部から介入があり(執行を猶予するFIFAの懲戒規定)第27条が適用されたことは今まで1度もなかったことで、驚いている。その説明は必要になると思う」と指摘した。
FIFA側の人間だが、トランプ大統領の行為について毅然と問題視した。「おかしい。FIFAやレフェリーの独立性も損なわれてしまう。ゆゆしき行為だ」と警鐘を鳴らした。
インファンティノ会長は6日(日本時間7日)に初めて反論。XのFIFA Mediaに声明を投稿し、トランプ大統領からの電話を認めた上で「FIFAの独立した司法機関、規律委員会の決定を常に尊重している。私たちは無関係だ」と強調した。もちろん収まっていない。
問題を巡っては、欧州サッカー連盟(UEFA)も「一線を越えた。このように前例がなく、理解不能で、正当化できない決定に驚きを隠せない」とFIFAを非難する声明を出した。
米メディアによると、トランプ大統領は「私は再検討を求めただけ。ファウルだと思わなかったから」と説明しているが、世界は信じていない。
退場した選手が自動的に次の試合が出場停止になる第66条との矛盾も指摘されており、大会期間中の猶予も極めて異例。今回のFIFA判断は、物議を醸して当然の愚行と批判されている。【木下淳】


