日本が劇的な逆転勝利で準決勝進出に前進した。南米の強豪コロンビアに2-1。前半7分にセットプレーから先制を許したが、主将でエースの川村怜(30)が同17分に同点、後半17分に決勝ゴールを決めた。

いつもは冷静が川村も興奮を隠しようがかなった。「チームが苦しい局面で2本決められた。勝ち切れて、結果が出せてうれしい。チームに迷惑をかけただけに、本当によかった」。コメントも自然に早口になっていた。

圧巻の中央突破からの決勝ゴール。自陣深くでルーズボールを拾ってドリブルに入った。緩急をつけた柔らかくて切れのあるボールさばきで左から右へピッチを斜めに駆け上がる。最後は2度のフェイントで最後の選手を翻弄(ほんろう)し、角度のないところから右足で左サイドネットを揺らした。前半の同点弾は黒田智成(40)が右サイド突破から運び込んだこぼれ球を、左サイドに流れて右のトーキックでゴール右上に決まる技あり弾だった。

今大会は出場チーム数、大会方式も20年東京パラリンピックと同じ。開催国枠で東京出場が決まっている日本は前哨戦と位置づけ、優勝を目標に掲げている。川村は大会への意気込みを「確実に勝ち上がって、頂点からこれまでと違う景色を見てみたい」と口癖のように表現してきた。

昨年の第1回大会1次リーグ、日本はトルコとの最終戦に引き分け以上で決勝進出が決まったが、圧倒的に攻めながら後半にカウンター2発を浴びて5位決定戦に回らざるを得なかった。そんな苦い経験から1年、高田敏志監督(51)が掲げる攻撃サッカーに磨きをかけ、内容とともに結果にもこだわって準備を進めてきた。

19日の開幕戦は欧州王者で昨年の世界選手権でも欧州勢最高の4位になったロシアとスコアレスドロー。明らかな格上相手に両サイドの突破に加えて自陣から相手陣深くにループパスを散らしててゲームを支配し、何度も決定機をつくった。ただ、フィニッシュの精度だけが足りなかった。「僕が決めていれば…」と川村は唇をかみしめたが、絶対に勝たなければいけないコロンビア戦で結果を出した。

21日の相手は2連勝、勝ち点6で準決勝進出決定のスペイン。世界ランク4位で過去1勝7敗(PK戦を含む)の強豪と相対する。川村は言った。「明日負けたら今日の勝ちの意味がなくなる。チームみんなで死ぬ気で勝ちにいく。もう、今から準備を始めたい」。引き分けでも準決勝に進める日本だが、頼もしい主将を中心にA組トップ通過を狙う。【小堀泰男】