JFL鈴鹿ポイントゲッターズのFWカズ(三浦知良、55)が「ベスト8」を禁句にした。ワールドカップ(W杯)で日本ードイツ、ブラジルーセルビアを観戦して26日、ドーハから帰国。報道陣が「これでベスト8も」と水を向けると「まだ1試合。ベスト16も、1次リーグ突破も決めていない。浮足立って言っちゃダメ」と、強い口調で質問をさえぎった。

日本サッカーの歴史を見てきたカズならではの言葉だ。「先を見て、痛い思いもたくさんしてきた。1つ1つ、目の前の試合に集中しないと。ねっ、そうですよね」と、ドーハの悲劇時代を知る記者に同意を求め「サポーターが期待して言うのはいいけど、我々サッカーに関わる者が気軽に口にしてはいけない」と「ベスト8」を禁じた。

プロ37年目を終えた。栄光とともに多くの挫折も味わってきた。「ドーハの悲劇」はもちろん、クラブとの契約では0円提示もされた。「W杯でプレーする」と言うのも、実現していない。近くは今季の開幕前に「鈴鹿をJ3にあげる」と言ったが、クラブ自体が資格を失った。「1試合1試合」。誰もが口にするが、カズが言えば重さが違う。

日本代表の選手たちにも「まずコスタリカに勝ってほしい」。1次リーグ突破への道など考えず、目の前の試合に集中することを期待した。「初戦7失点だけど、次は分からない」と相手を警戒し「あとはテレビで応援するよ」と話した。

ドイツ戦のFW浅野の決勝点が、92年アジア杯イラン戦でのカズの決勝ゴールのようだと話題になった。DF井原の縦パスに抜け出し、角度のないところから「足に魂を込めました」の一発。チームを勢いに乗せて初のアジア王者に導いたが「全然違う。浅野のは、もっと角度がなかった。GKはノイアーだし、あそこしかなかったね」と絶賛。「今の選手は本当に素晴らしいよ」と笑顔で言った。

来季のことは白紙だが、まずは現所属の横浜FCと話し合う予定。「(契約)延長して、次を探すよ」と来季も横浜FCからの期限付き移籍でプレーすることを明かした。鈴鹿を含め複数クラブが獲得に乗り出すとみられるが「自分はまだ何も聞いていない。これからです」。W杯を見ながらも、来月12日にはトレーニングを再開する予定。プロ38年目に向けて、カズは走り出す。【荻島弘一】