女子5000メートルのヘレン・オビリ(28=ケニア)の14分21秒75など、5種目で今季世界最高がマークされた。注目選手が多数参加した男子100メートルは、昨年のロンドン世界陸上銀メダルのクリスチャン・コールマン(22)が9秒98で激戦を制した。日本勢は男子100メートルの桐生祥秀(22=日本生命)が10秒20で7位、女子5000メートルに出場した鍋島莉奈(24=JP日本郵政グループ)は15分27秒54で11位だった。

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 男子100メートルはコールマン、ロニー・ベイカー(24)、ノア・ライルズ(20)の米国勢3人が予想通りの好勝負を展開した。

 スタートでリードしたのは4レーンのベイカーだったが、中盤で5レーンのコールマンが前に出た。2人が接戦を繰り広げているところに6レーンのライルズが、残り20メートルから一気に追い上げた。

 3人が雪崩をうってフィニッシュし、コールマンと2位のライルズが9秒98の同タイム、3位のベイカーが9秒99という激戦だった。

 コールマンは「完璧なレース。良いレース、良いタイムだった」と、5月31日のローマ大会以来の復帰戦に勝ったことを喜んだ。故障があったことを明かしたが、「それでもこの大会に向けて良い練習ができた。このメンバーで勝てたことも驚きではない」と自信を持って臨んでいた。

 桐生は序盤こそ4番手くらいにつけていたが、中盤以降は後退して7位。3位と敗れた6月の日本選手権と同様に“スイッチ”が入らなかった。

 だが10秒20のタイムは、向かい風0・4メートルで上位選手も自己記録より0・1秒以上遅くなった点を考慮すれば悪くはない。世界のトップ選手と中盤まで競り合ったことは、今後に期待できる点だろう。

 女子5000メートルのオビリは残り200メートルでトップに立ち、最後の直線は腕を大きく振って逃げ切った。昨年のロンドン世界陸上金メダリストのオビリだが、5月のユージーン大会で3位と敗れていた。「この勝利と今季世界最高はうれしいですね。速くて難しいレースでしたから。特に最後の1周は厳しかった」と話した。女王が本来の勝負強さを取り戻した。

 日本人2人目の14分台も期待された鍋島は、スタート直後に15分切りを目指すペースの選手に付くプランだったが、全員が14分30秒ペースで走り始めたため1人で最下位を走る苦しいレースに。その展開でも後半2人を抜き、15分30秒を切ったことは評価できる。この経験を8月のアジア大会など、今後の国際舞台に生かすだろう。

◆今季の男子100メートル

 米国トリオが3強といえる状況だ。全米選手権のライルズと、ダイヤモンドリーグ・パリ大会のベイカーが9秒88の今季世界最高をマークしている。コールマンは6月に試合に出ていなかったことも影響してラバト大会優勝時の9秒98がシーズンベスト。5月のユージーン大会は追い風2・4メートルで参考記録になったものの(2・0メートルまでが公認)、ベイカーが9秒78、コールマンが9秒84で走っている。だが、パリ大会ではジミー・ビコー(26=フランス)が9秒91、蘇炳添(28=中国)も9秒91のアジアタイ記録と、ベイカーに0・03秒差と迫った。200メートルではライルズが“ポスト・ボルト争い”を1歩リードしているが、100メートルは混戦模様が続いている。ラバト大会をきっかけにコールマンが抜け出すか。