東北最強の女子スプリンター山形中央・青野朱李(3年)が大学陸上界の名門、山梨学院大に進学することが13日、明らかになった。同大の部長を務めるのは現在、日本陸連で強化委員長を務め、16年リオ・オリンピック(五輪)では陸上日本代表の監督を務めた麻場一徳氏(58)。一流のコーチ陣が、選ばれた少数精鋭のアスリートを指導していく方針と、全天候型400メートルトラック6レーンを構え、天然芝が映える抜群の練習環境に、同大への進学を決断した。山形から山梨へ拠点を移し、20年東京五輪を目指す。

昨夏、2年生で臨んだ地元山形開催のインターハイ陸上女子200メートルで、青野は日本一になった。同100メートルと10月の国体も3位入賞。3年生となる今年、さらなる飛躍が期待された。

順調すぎるくらい、順調だった。5月の県総体200メートルで23秒61の自己ベストをマーク。これは福島千里(30)に次ぐ今年の日本女子2位のタイムで、高校歴代3位にランクされる。勢いそのまま、7月のU-20世界選手権(フィンランド)に挑んだ。レース2日前「すごく調子が良くって、練習でガンガン走っていた」(青野)。すると、左足に激痛が走った。それ以来、満足に練習できないまま8月のインターハイを迎える。昨年3位の100メートルで、まさかの準決勝敗退を喫した。連覇のかかる得意の200メートルも、最後の直線で抜かれて2位。それでも「痛みはなかったから」とケガのせいにはしなかった。直後、病院で検査すると左足踵骨(しょうこつ)が疲労骨折していた。

ラストチャンスは10月の福井国体。しかし、骨折判明後3週間は、全く走れなかった。そこから元に戻すまで通常6週間はかかるが、佐藤孝夫監督(57)は「それを4週間で戻した。本番に合わせる力は本当にスゴイ」と舌を巻く。結果、100メートルで3位入賞。得意の200メートルが国体種目になく、100メートルにすべてをかけただけに「本当にうれしかった」と声を震わせる。これで国体100メートルは、称賛の3年連続3位だ。

強い青野が帰ってきた。10月のU-20日本陸上選手権(愛知)は、大学生を相手に100メートルと200メートルで2冠を達成。特に200メートルは23秒69の好タイムで、完全復活をアピールした。

今は胸を張って「目標は東京五輪です」と言える。夢実現のため選んだ進路は、日本を代表する一流の指導者を擁す山梨学院大だ。青野は「とにかく練習環境が素晴らしくて、自分が成長できると思えました。山梨は山形と似た雰囲気の町で、今までと変わらず落ち着いた気持ちのまま、日々を送れそう」。晴れやかな気持ちで、東京五輪への1歩を踏み出す。【鈴木豊】