思慮を巡らせながら、言葉をつむいだ。陸上男子100メートルで9秒97の日本記録を持つサニブラウン・ハキーム（21）が26日、都内で報道陣の取材に応じた。
米国では人種間の不平等を撲滅するための「BLM（ブラック・ライブズ・マター）」運動が広がる。女子テニスの大坂なおみも全米オープンで、黒人犠牲者の名前が記されたマスクを着用し、問題を提起した。
「大学1年目に歴史の授業で、そういうものがあると学んだ。BLMの運動をやっている間に自分もアメリカにいた。デモなどを目の当たりにした。問題が残っていると再確認し、それを訴える人を見て、人によっては、そういう発信をしていくことも大事」
高校まで日本で生活。不条理は「あまり経験していない」。その上で続けた。
「日本人ですが、米国では、見た目がアフリカ系アメリカ人とあまり変わらない。立ち居振る舞いもそうですし、発信していくことにも気を使っていかないといけない。それをより感じた数カ月だった」
今、競技以外の発信をするアスリートは増えている。昨年11月にプロとなった男にも、とても21歳とは思えない自覚がにじんだ。
7月から練習拠点を旧知のコーチとトップ選手がいる米フロリダ州のプロチームに変更。今回は休暇とビザの手続きで一時帰国した。東京オリンピック（五輪）へ長期的な計画による強化のため、日本選手権は欠場し、近日中に渡米する。残り300日となった五輪へ向けては「目標は金メダルで変わらない」と力を込めた。【上田悠太】
