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己の道貫く角田夏実「柔道は『好き』でやっている」

柔道の17年世界選手権女子52キロ級銀メダルの角田夏実(27=了徳寺大職)が14日、全日本実業個人選手権(兵庫・ベイコム総合体育館)に1階級下げた48キロ級で出場する。東京学芸大3年時以来、7年ぶりの最軽量級での挑戦となる。

友人と都内の有名タピオカ店を巡る角田夏実(左)
友人と都内の有名タピオカ店を巡る角田夏実(左)

27歳の柔道家が思い切った決断を下した。角田は9月某日、都内で階級変更した理由をこう説明した。「(世界選手権2連覇の)阿部詩選手と(17年世界女王の)志々目愛選手の2人が抜きんでていて、20年東京五輪代表もそのどちらかだと思っている。自分の可能性はほぼないし、だったら体重を落として48キロ級に挑戦するのもありかなと考えた」。代表3番手という現状を踏まえ、今春に所属の山田利彦監督に相談の上、挑戦を決意した。

減量に関しては、楽観的に考えていた。52キロ級の時は、大会前の追い込み稽古や食事節制などを行うと前日計量で51キロぐらいだった。試合の度に「ちょっともったいない」という感覚で、サウナなどで水抜きすれば48キロ級も可能と考えていた。48キロ級で大会に出場した大学3年時は、計量後のリカバリーに苦労したが、時間もたって了徳寺大に就職する際にも山田監督に「48キロ級でやってみたい」と相談した。しかし、社会人になったばかりの15年6月に大学時代に痛めていた右膝前十字靱帯(じんたい)の手術に踏み切った。手術の影響で、ウエート中心の生活が続き、上半身の筋力がついたことで体重は58キロまで増量した。そのため、まずは52キロに落とすことだけを考えた。

今回は、8月中旬頃から本格的に減量を始めた。48キロ級選手に減量方法について聞いて回り、食生活を見直して夕飯も控えめにするなど意識した。大会3日前には50キロとなったが、「50キロの壁」があると強調した。「ここからの2キロがなぜか落ちない。食事量も減っている分、疲れやすい…。組み勝てないし、受けも軽くなって、足も動かず投げられる。52キロの時と変わらないと思ったけど、想像以上に体の変化を感じる。自分でもびっくりしている」。これまでも多くのけがと付き合ってきたが、減量したことで腰も悪化しているという。

今大会を機に、本格的に48キロ級へ転向かと思いきや話を聞くとそうでもない。先月の世界選手権での阿部と志々目の結果を受けて、東京五輪代表がより厳しい立場となった。将来を見据え、柔道と向き合う中で教員への道などの選択肢もあったが、角田はこう答えを導き出した。

「柔道は『好き』でやっているもの。五輪は夢であるけど、最終目標ではない。五輪が無理でも、このまま柔道が楽しいと思ってやれるのであれば、それで良い。体が動くうちは柔道をやれるだけやりたいし、自分が納得するまで柔道を突き詰めたい。ゴールは次のパリ五輪でもないし、年齢でもない。そのために48キロ級に挑戦してみて、52キロとどちらが合っているのかということを体験してみたい」

仮に、48キロ級に本格的に転向した場合は、世界選手権2連覇で18歳のダリア・ビロディド(ウクライナ)との対戦も夢見る。練習では何度か組み合ったことがあり、「自分の力を試してみたいという気持ちもある」と素直な思いを語る。今は、柔道以外の時間も充実していて「毎日が楽しい」と笑みを浮かべる。減量で大好きな塩サウナに入りながら痩せる喜びや、出稽古後のタピオカ名店巡り、大会後にご褒美とする温泉ツアーや長距離サイクリングなど全てが柔道へのモチベーションとなっている。

寝技を武器とし、24歳で主要国際大会にデビューした遅咲きだ。経歴も異色で、型にはまらず「普通じゃなくいたい」と己の道を貫く。今大会も周囲に「何かやってくれそう」と期待を抱かせる。個人的に、トップアスリートで常に結果を求められる立場でありながら、競技を心から「楽しい」と言葉に出来ることは素晴らしいことだと考える。畳の上で、その楽しさを体現してくれるに違いない。27歳の柔道家の新たな挑戦が始まる。【峯岸佑樹】

今年5月に千葉から日光へサイクリングした角田夏実
今年5月に千葉から日光へサイクリングした角田夏実
48キロ級への思いを語る角田夏実(撮影・峯岸佑樹)
48キロ級への思いを語る角田夏実(撮影・峯岸佑樹)

スポーツをこよなく愛する日刊スポーツの記者が、スポーツの醍醐味、勝負の厳しさ、時には心が和むようなエピソードなど、さまざまな話題を届けます。

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