苦手意識の向き合い方。ゴルファーだけではなく、誰もが人生で直面する課題だろう。
「いやあ、もうそこは逆に楽しみにしてたんですよ!」
石川遼の声が弾んだ。男子ゴルフのBMWツアー選手権森ビル杯の最終日が行われた6月9日。茨城県宍戸ヒルズCCのクラブハウスで、プレーオフまで含めた19ホールの戦いを終えた32歳に、人生訓を教えてもらった気がした。
会場は過去10回の出場で予選落ちが5回、最高位が15位。海外も含めて数々のコースでプレーしてきた石川にとっても、「なかなか自分自身がここより難しく感じるコースもない」と言い切る場所だ。今週も「すごい難しいなと思いながらやってた」という。
ただ、その口調に悲壮感はない。むしろ逆に、愉悦すら感じさせる言葉が続いた。「景色、コースの狭さ、そういったところに、『なんとなく難しい』『なんとなく立ってて気持ち悪いな』みたいな。それがなんでなのかなっていうのが少しずつ解明できた1週間だったので」と説きながら、こうまとめた。
「まだまだここのコースから得られる事は多そうだなと思うので。うん、非常に来年も楽しみですね」。
鳥肌が立つようなプレーをこの日は見せてもらったが、何より感銘を受けたのは、苦手意識に対するスタンスだった。それはゴルフ担当をしていた10代の頃にも感じていたし、いまも変わらない。苦手が成長させてくれる-。言うは易しで、実際はなかなか難しい。が、石川は今も、同じように「楽しみ」と感じ続けていた。
この日、石川と同組だった小寺大佑にホールアウト後に話を聞くと、「遼さんはスター過ぎました。苦手なコースには感じなかったです。鳥肌が止まらなかったです」と目を輝かせた。ゴルフを始めた幼少期、あこがれが石川遼だった世代の1人。「小さい頃に『遼クンを超えたいです』みたいなことを言っている映像がいとこから送られてきて。生意気なこと言っているなと思います」と苦笑する。ひと昔前は「遼クン」、いまは「遼さん」。ただ、本人は変わらない事もある。それが強さを支えてもいるのだろう。
この日の6番、石川はグリーン左ラフから難しい下り傾斜を読み切ってチップインイーグルを決めた。小寺がアプローチからバーディーを奪った後に「ナイスです」と声をかけると、「いや、アプローチは小寺君の方がうまいよ」と返してくれたという。
鬼門コースの攻略法を考え続け、いつも以上に神経を使っていた4日間開催の最終日、優勝争いをする中でも、近寄りがたさはなかった。楽しむ、その思いがあるからこそ、素直に他者を称賛もできるのだろう。今も多くのギャラリーを引き連れる「遼さん」が楽しむ姿を、また見たい。【阿部健吾】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)



