「しょまりん」が競技のリンクに帰ってきた。本田真凜(25)宇野昌磨(28=トヨタ自動車)組が、アイスダンスで公式戦デビューを果たした。東日本選手権と併催される予選会のリズムダンス(RD)に出場し、次回30年にフランス・アルプス地域で行われる冬季オリンピック(五輪)の新たな夢へ、現役生活の再スタートを切った。
2人は自信に満ちた表情で競技会の氷に立つと、息の合った演技を披露。最後まで堂々と滑り切って58・68点をマークした。
観戦チケットが完売した会場には60人を超える報道陣が詰めかけた。男子で世界選手権2連覇、五輪2大会連続メダル(銀銅)の宇野と、16年世界ジュニア選手権女王の本田。ともに24年にシングルの現役を退いたが、今度はパートナーとして5番滑走で登場した。
初陣のRDに選んだのは「ポエタ」。宇野のシングル時代のコーチ、ステファン・ランビエル氏が現役時代に演じた楽曲で、宮本賢二氏が振り付け、ランビエル氏の助言も受けて磨いてきた。
今季の課題「ゴールデンワルツ」を盛り込み、宇野が「ちゃんといい演目だなって思える演目はつくれた」と自信を見せていたプログラムで、息の合った演技を披露した。
本田は身長163センチで、宇野は157センチ。女性の方が6センチ高い2人は、相手を持ち上げるリフトも工夫を重ねてきた。宇野は体格差を「補う」のではなく「生かして」強みにする姿勢を強調。身長差が小さいからこそできる技や見せ方を探り、シングルで培ったスピードと表現力も武器に、新たな種目へ挑んでいる。
出発点は2年前の誘いだった。24年10月、宇野が本田に「オリンピックを目指して一緒にアイスダンスをやりませんか」と声をかけた。交際を公言する2人。他の選手と組む本田を思い浮かべると「どうせなら、絶対、隣は自分がいいなって」としか思えなかった。本田も「昌磨くんとだったら実現できるかもしれない」と応じた。
22年北京五輪代表の小松原美里さんらの指導を受けながら準備を進め、今年2月からは共同のインスタグラムで練習風景を発信。5月22日の結成会見では、目標を問われた2人が声をそろえ「2030年のオリンピックに出場することです」と宣言した。
7月末には宇野が手がけるアイスショー「アイスブレイブ」で「ポエタ」を初披露した。一方、9月のCS木下グループ杯は競技実績がなく、日本連盟の派遣対象外となり、スタンドからライバルたちの演技を見つめた。ショーで経験を重ねてきた2人が、満を持して得点と順位を競う舞台に立った。
本田はデビューシーズンへ「1年目だからといってビビらずに、爪痕をしっかり残すつもりで戦っていきたい」と語ってきた。宇野にとっては3シーズンぶりの競技会。互いの滑りを知り尽くす2人が、4年後の五輪へ最初の一歩を踏み出した。
11月1日のフリーダンス(FD)では、ジャンリュック・ベイカー氏が振り付けた「四季」を演じる。テーマは鳥と花。宇野が鳥、本田が花を表現し、宇野の代名詞「クリムキンイーグル」を生かした独自のリフトも盛り込む。12月の全日本選手権(大阪)に向けて、さらに足並みをそろえていく。【勝部晃多】


