昨年9月の韓国・仁川アジア大会でカメラを盗んだとして、仁川地裁から窃盗罪で有罪判決を受けた競泳の冨田尚弥選手(26)が4日、名古屋市内のホテルで記者会見し、控訴断念を表明した。あらためて無罪を主張しながらも、これ以上の裁判は無意味と判断。競技生活の継続が難しいことも明かした。
黒いスーツ姿の冨田選手は会見で「これ以上闘っても意味がない」と控訴しない意向を示した。少し疲れた表情で「裁判所は私の話を聞いてくれなかった。これで有罪になるなら控訴しても仕方がない」と説明した。同席の弁護団は「控訴審では新しい証拠が必要。今の段階で1審判決を覆すのは難しい」とした。これで有罪判決が確定する。
冨田選手は今後について問われると、しばらく沈黙。周囲のサポートもないことから「競技生活を続けるのは難しい」と話した。
騒動となったことには「迷惑をかけて反省している」とし「裁判で有罪と言われるのはつらい。納得できないことはたくさんあるが、もう1度、味わうのは耐えられない」と話した。
会見場で弁護団は監視カメラの映像を上映。代理人の国田武二郎弁護士は、犯行現場を写した場面に登場する人物が冨田選手という前提で有罪判決を出しているとして、「事実誤認だ」とあらためて潔白を強調した。
冨田選手は仁川アジア大会中の昨年9月、チームの応援で訪れた競泳会場で韓国メディア記者のカメラを盗んだとして略式起訴され、罰金を納付。その後、一転して無実を訴え正式裁判を申し立て、仁川地裁は5月に求刑通り罰金100万ウォン(約11万円)の有罪判決を言い渡した。
判決などによると、選手村の冨田選手の部屋から被害品が見つかった。同選手は「見知らぬ人物にバッグに入れられた」と主張したが、仁川地裁は「監視カメラの映像に写っておらず、信じるのは困難」と退けていた。
◆冨田尚弥(とみた・なおや)1989年(平元)4月22日、愛知県生まれ。豊川高-中京大-デサント(14年10月7日に解雇)。かつて「ポスト北島の1番手」と呼ばれ、10年広州アジア大会の200メートル平泳ぎで金メダル。09、11年世界選手権代表。174センチ、74キロ。
<窃盗問題経過>
▼14年9月24日 アジア大会男子100メートル平泳ぎで、4位入賞。
▼25日 競泳会場のプールサイドの記者席から、カメラの望遠レンズを外し、800万ウォン(当時約83万円)相当の本体を盗んだ(後日、冨田選手は否定)。
▼26日 男子50メートル平泳ぎで予選敗退。監視カメラの映像から、冨田選手が浮上。韓国警察から聴取され容疑を認める。
▼27日 JOCは、規律違反があったとして日本選手団から追放、選手村での謹慎を命じる。
▼29日 仁川地検が窃盗罪で罰金100万ウォン(当時約10万円)の略式起訴処分。冨田選手は即日納付。被害者に直接謝罪し、両者の間で示談成立。
▼10月1日 帰国。韓国・金浦空港を出発する際「僕やってないです」。
▼31日 仁川南部警察は、防犯カメラの映像にカメラを盗んだ場面が写っていると証言。冨田選手も映像を確認。「僕で間違いありません。すみませんでした」と認めたと明かした。
▼11月6日 弁護士と会見。見知らぬ人物からバッグにカメラを「入れられた」と窃盗行為を否定。警察から窃盗を認めなければ帰国できないと脅されたとし、見せられた防犯カメラの映像には、盗んだ瞬間は写っていないとした。
▼15年1月12日 初公判の罪状認否で無罪を主張。
▼5月28日 判決公判で仁川地裁は求刑通り、罰金100万ウォンの有罪判決を言い渡した。


