ラグビーの国際統括団体、ワールドラグビー(WR)が1日(日本時間2日)、年間表彰式を行い、日本代表がW杯イングランド大会1次リーグで優勝候補の南アフリカを大逆転で下した試合が「W杯最高の瞬間」を受賞した。日本代表のヘッドコーチ(HC)を退任したばかりのエディー・ジョーンズ氏(55)は2日、都内の日本外国特派員協会で会見し、朗報を喜んだ。

 未来の日本ラグビー界への提言が並んだ後、場の空気は少し和んだ。日本の受賞について聞かれたジョーンズ氏は、スムーズに切り出した。「知りませんでした。いいニュースですね。素晴らしい、素晴らしいとみんなに祝福してもらったが、形に残るよう表彰してくれて、良かったと思います」。

 ファン投票による「W杯最高の瞬間」部門は新設で、過去の大会を含め4つの候補が挙がった。03年大会でイングランドを初優勝に導いたSOウィルキンソンのDGなど名場面ばかり。WRによると、一般のファンから投票を受け付けたフェイスブックには500万人以上が票を投じ、日本戦は5割以上を集めた。

 南ア戦のハイライトは3点を追う試合終了間際。相手が反則を犯したが日本はPGを狙わず、トライを取るためにスクラムを選択。そのドラマを同氏は振り返った。

 ジョーンズ氏 あの時、私は選手に向かって怒鳴り散らしていました。(PGを選択して32-32の)ドローを取るんだ、半分(引き分けの意)でいい、と。それでもリーチは言うことを聞かなかった。それなら、どうなるか見てやろうと思った。そしたら本当に逆転した。トライを奪った、素晴らしかった。

 W杯後も同氏はリーチの判断をたたえ、スタンドから叫んだなどの詳細はほとんど触れなかった。近日中に日本を離れ、新天地ストーマーズ(南ア)へ旅立つ間際、当時のやりとりを正直に口にした。

 PGではなく、スクラムを選んだ価値観を共有するフッカー堀江も受賞について「そりゃそうやろう、という感じです。あんなのなかなかないです」と言い、プロップ畠山は「もちろん、うれしいです」と端的に喜んだ。FB五郎丸は「19年に向けてこの流れを加速してやっていける」と決意を口にした。

 日本代表のチャレンジがあらためて世界中から認められたことを再確認する朗報となった。

<その他ノミネート>

 日本の南ア戦が受賞した「W杯最高の瞬間」は、以下の3つも候補にノミネートされていた。

 ◆候補1 03年大会決勝、イングランドのSOウィルキンソンがオーストラリア戦の延長終了間際に決めたDG。17-17で迎えた再延長突入寸前、利き足でない右足で決めた。この直後、ノーサイドの笛が鳴り、北半球勢で初のW杯制覇を成し遂げた。

 ◆候補2 99年大会準決勝でフランスがニュージーランドを破った試合。フランスは優勝候補を相手に、一時は10-24とリードを広げられた。そこからSOラメゾンが2DG、2PGを決めて追い上げた後、3トライを加えて逆転。W杯史上、記憶に残る番狂わせとして知られている。

 ◆候補3 95年大会準決勝でニュージーランドのWTBロムーがイングランド戦で決めたトライ。試合開始直後、22メートルライン付近のラックから左に展開。流れたパスを拾ったロムーは1人目、2人目をハンドオフで倒し、最後は正面からFBを体当たりで吹っ飛ばした。195センチ、118キロながら100メートルを11秒台で走り、「怪物」と恐れられた。