ノルディックスキー・ワールドカップ(W杯)ジャンプ男子が、23日にビスワ(ポーランド)で開幕する。昨季は小林陵侑(23=土屋ホーム)が日本人男子で初めて総合優勝を達成する歴史的なシーズンだった。今季の日本勢の活躍は。本紙評論家の原田雅彦氏(51=雪印メグミルク監督)が展望を語り、「日本が強豪国と言われるようになるシーズン」と期待した。【取材・構成=西塚祐司】

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新シーズンがいよいよ始まる。日本勢の中心は23歳の若きエース小林陵。直近の国内大会は10月の全日本選手権ノーマルヒルで3位、ラージヒルで優勝、11月のUHB杯は2位だった。

原田氏 冬に実力を発揮するタイプでまだ本調子ではなかったと思う。それでも優勝するところはさすがだな、と。素晴らしかったですね。

昨季は総合優勝に加え、歴代2位タイの13勝、史上3人目となるジャンプ週間完全制覇と記録ずくめだった。03~04、04~05年のアホネン(フィンランド)以来となる2連覇を目指す今季はどうか。

原田氏 周囲の期待、重圧は感じるでしょう。「普通に飛んでもダメなんじゃないか」みたいなことは(周囲から)言われるかもしれない。ライバルがいるので、たとえ優勝を逃しても、自分のスタイルを崩さないこと。違う方向性に進まないで、彼の素晴らしい部分を伸ばしてほしいです。

ネクストブレークに期待がかかるのは佐藤。昨季はザコパネ大会で初表彰台となる3位。夏の国際大会、グランプリでは総合2位になった(小林陵は4位)。

原田氏 ストイックな選手で少しずつ段階を踏んでW杯に定着してきた。今は常に上位に入ることをテーマに挙げていると思うし、実現して欲しいです。殻を破るきっかけがあればさらにグンと上がります。

団体戦では復活の兆しが見えている。18年平昌五輪は6位。だが今年2月の世界選手権(オーストリア)では、5大会ぶりの表彰台となる3位に入った。

原田氏 W杯は常に3位以内の常連国になると思います。今は海外勢と肩を並べて飛ぶようになった。「これはちょっと敵わない」と感じることはない。日本が強豪国と言われるようになるシーズンになると思います。

W杯は団体戦からスタートする。長い戦いの始まりを、全体で勢いづけたいところ。小林陵ら若手を中心に葛西、伊東のベテラン勢を含めた「ONE TEAM」を強調する。

原田氏 団体は3~4人だけで強くてもダメ。やっぱりチーム。6人誰が出ても(変わらない)というぐらいのチーム力がないといけない。北京五輪まであと2年3カ月。いきなり五輪に行って表彰台に上がるというような虫のいい話はない。実績を積んで、22年北京五輪で「あの時があったから今がある」と言えるようなシーズンを送って欲しいですね。

◆今季ジャンプ男子の勢力図 個人戦は昨季王者の小林陵を中心に、総合2位で17年世界選手権2冠のクラフト(オーストリア)、ソチ、平昌で五輪2大会連続ラージヒル金メダルのストッフ(ポーランド)が続く。昨季総合5位で夏のグランプリ総合優勝のクバツキ(ポーランド)にも注目。団体戦では今年2月の世界選手権で2位に50点差以上をつけて優勝したドイツ、2位オーストリア、日本と3位を争ったポーランドがライバルになる。

▽男子W杯開幕の代表メンバー 小林陵侑(23)葛西紀明(47=ともに土屋ホーム)伊東大貴(33)小林潤志郎(28)佐藤幸椰(24=いずれも雪印メグミルク)中村直幹(23=東海大北海道ク)